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ダンジョンの最高峰たる難度十への挑戦権を持つ、全世界総勢三百万人近い
そんな席次の末座を温める俺とリゼだが、世間的には一応学生の身。
ぶっちゃけ辞めたって構わんけども、学業と
リゼもリゼで実家が既に学費を全額払ってしまっている手前、自主退学は流石に憚られるらしく、なんやかんや大学には来てる。
「ま、退屈な日常パートも悪くねぇ。人生は幾らかの娑婆気を挟んだ方が、いざ楽しむ時にアガるもんなァ」
……しかし、だ。
「ふむふむ……成程、骨密度と血管年齢……」
生徒ですらないヒルダの奴が隣で堂々と講義を受けてるのは、どういう了見なのか。
てか
「スプリンクラーが動いてズブ濡れだ」
「災難だったね。原因は手抜き工事かな」
しらばっくれるな大馬鹿野郎。
てめぇがタバコ吸ってた所為だっつーの。
「俺に言うことがあるんじゃねぇのか」
「水も滴る良い男。色っぽくて素敵だよ」
歯の浮くような台詞と併せ、頬にキス。誤魔化し方が欧米。
口説き文句より先に謝れや。
「あ。リゼが居るよツキヒコ」
濡れ鼠状態で陽光を浴びるのが意外と気持ち良かったため、敢えて『ウルドの愛人』を使わず日当たり良好な中庭にて服を乾かしていたところ、ヒルダが図書館の窓際に座るリゼを指差す。
ここからでは横顔しか見えんけども、空間投影ディスプレイを正面に鬼気迫る表情。
アレは相当キてるな。恐らく卒論作成中だろう。進捗芳しからぬと愚痴ってたし。
「……声、掛けない方が良さげ?」
「命を粗末にしたけりゃ話は別だが」
触らぬ神に祟りなし。
先人の言葉は説得力が違うぜ。
「うぇりっすー月ちゃん! それにヒルダちゃんも! こんな所で奇遇ですなあ、グーキー!」
「やあキチダ。相変わらず難しいこと何も考えてなさそうな感じだね」
「あっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」
ぼちぼち昼飯にありつこうとカフェテリアを目指していたら、アホ笑いを響かせるアホアホの吉田とエンカウントした。
次いで、ふと思う。
こいつを倒せばレベルが倍くらい上がるんじゃなかろうか、と。
よし倒そう。
「七孔噴血、二の打ち要らず」
「たわらばっ」
「え――ちょ、キチダァッ!?」
丸めた紙さながらの勢いで吹っ飛ぶ、成人男性一人分の質量。
ヒルダに滅茶苦茶怒られた。
つーかレベルって何だよ。
そんなもん現実にねーよ。
「全くキミは! 全くキミは!」
「ごめんなソーリー」
キレるなよヒルダ。割とすぐ復活しただろ。
なんなら地軸の乱れを直すバイトがあるとかで元気そうに走って行ったし。
尚、発言内容に関してはノーコメント。深く考え始めると疲れるし。
仕事道具だと天突きを抱えてたが、アレところてん作る以外に用途あるのか?
「友達は蝶よりも花よりも大事にすべきなんだ! そこら辺、分かってるのかい!?」
「あーあー、分かってる分かってる。トモダチはボールだ」
「そう、その通り! ……うん? 今、受け答えが奇妙なことに……翻訳機の誤作動?」
にしてもまあ、暇で仕方ねぇ。日常パート飽きた。
いつまでチンタラ待たせる気だよ、ジャッカルの奴。
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