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「――ふむ! お初の相手も居る! 話の前に、改めて名乗りを上げておいた方が良さそうだ!」
勢い良く玄米茶を飲み干した喉が奏でる、高らかな一声。
高らかってか、シンプルにうるせぇ。
「オレはジャッカル! ジャッカル・ジャルクジャンヌ! 六趣會『餓鬼道』! チーム代表も務めている、以後よろしく!」
「よろしくして欲しかったら声抑えて。叩き出すわよ」
「おっと、そいつは困る。ごめんなさいね」
寝そべって手足を伸ばすリゼに睨まれ、素直に低頭するジャッカル女史。
しかし何度聞いても、すげぇ名前。同じチームだというカルメン女史の本名をも凌ぐインパクト。絶対ハンドルネームだろ、顔とか普通に日本人だし。
「ちなみに今期のDランキングは堂々の十位。とあるルーキーが想像だにしない活躍を見せた影響で、幾年ぶりの
「そ」
嘘でも関心示すフリくらいしろやリゼ。鳩のポーズは話聞く態度のうちに入らんぞ。
……でもまあ仕方ないか。コイツ他人を家に上げるの嫌いだし。
死線を共にし友誼を育んだヒルダや、軍艦島カタストロフの一件で借りがある博多の女は兎も角、ジャッカル女史には分かりやすい塩対応。
棲み着いてる連中もリゼの苛立ちを気取ったのか、急ぎ居間を離れて行く足音が、廊下から襖越しにドタドタ響いた。
「ひいいぃぃぃぃっ!?」
そうなると次に大声を撒き散らすのは必然、ホラー耐性がアホほど低いヒルダ。
悲鳴と併せて天井へと張り付いた姿に、リゼが半眼で述べる。
「鏡見なさいよ。今の自分の方が、よっぽどホラーだと思うけど」
全くだ。
「フンギャロフンギャロ」
ドイツ人のくせ袈裟など着込み、数珠まで手にして意味不明な念仏を唱えるヒルダは一旦放置。
「両名、硝子とは既に面識があったらしいな」
「ガラス?」
ジャッカル女史の告げた名に対し、小首を傾げるリゼ。
博多の女のことだ、と俺が横から補足を入れる。
「ほら硝子、ちゃんと自己紹介を。どうした、今日はやけに口数少ないぞ」
「……………………
長い沈黙の末、蚊の鳴くような小声。
薄々感じてたが、軍艦島でファーストコンタクトを交わした時とキャラ違い過ぎじゃね?
「どっかで聞いた名前ね」
「だろうとも。Dランキングの現四位だ」
さらりと明かされた、結構な情報。
交流会では席を空けていた四位様が、まさか顔見知りだったとは。
「それに硝子は国選の――いや、脱線になるから控えよう。実のところ、あまりスケジュールに余裕が無い」
早々と本題に入らせて貰う。
そんな口舌の後、掛けた眼鏡の位置を直し、一拍挟むジャッカル女史。
そして。
「――藤堂月彦。キミには世界を救う一助となって欲しい」
だいぶ壮大、かつ電波なこと言い始めた。
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