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形持たざる念動の力場たる『
あの出力と連射に耐える強度を備えた銃身が、見事なブツ切り。
流石、切断と破壊の呪を帯びた大鎌。相変わらず馬鹿みたいな斬れ味。
「ハハッハァ。全く、ご主人様と違って素直な奴だよ」
禍々しく攻撃的なシルエットとは裏腹、実のところ武器として扱うには不向きな形状、歪な重心。
しかし、そういうものだと弁えた上で扱えば、気に留めるほどでもない。
「使いやすい使いやすい。ああ、実に使いやすい」
思い返す、という作業が不要なくらいには脳裏へと焼き付いたリゼの動きを真似る形で、戯れ程度、演舞に興じる。
……どうも馴染まんな。当然か、体格含む諸々の条件が違い過ぎるのだから。
そもそも他人の技術をそのまま使ったところで、得られる成果など高が知れてる。自分用にカスタムせねば何の意味も無い。
ただ、こうやって遊び半分に再現を図っただけでも、アイツの力量を改めて認識出来る。
膂力にこそ欠けるものの、ネコ科動物並みの柔軟性とバネを備えた肢体。
魂の視認やエネルギー察知という特異な感覚による先読み。そいつを十全に活かせる反射神経。
そこに『空間斬』の反則じみた攻撃力と、汎用性が飛躍的に増した『
いくら
重ねて、成長速度も尋常に非ず。
スキル関連を差っ引いた基礎的な部分だけ並べても、出会った当初と比べて天地の差。扱い始めて一年足らずで達人級に至ったナイフ捌きが最たる例だ。
人のこと怪物だの頭おかしいだの言えた立場かよ。
結論。俺の嫁つええ。
「……む。いいこと思い付いた。よし試すか」
鋭利な軌跡で『飛斬』や『
早速、実行すべく、血管内に取り込んでいた残穢を逆流させ、大鎌へと戻す。
既に混ざり切った、俺の血も添えて。
「ツキヒコ、何を」
右腕を爪で抉り、噴いた血を腕から柄、柄から刃に伝わす。
どうせ残穢の混ざった血を放っておけば、骨肉どころか魂まで腐り果てていたのだ。丁度良い。
そうして、残穢と共に俺の生体エネルギーを啜った大鎌が、ひと回り肥大化するかのように脈動した。
「それ、は」
目を見開くヒルダ。
気付いたか。そりゃ気付くわな。
「てめぇの想像通りさね」
応とも。こいつは『呪胎告知』だ。
厳密には発動媒体の大鎌に染み付いた残穢を拠り所に形だけ寄せた、似て非なる紛い物だが。
「さっさと備えろよ。でなきゃ死ぬぜ?」
規則的な拍を刻んでいた
強引に嵩増しさせた不純物塗れの呪詛も、ちょいと気を抜けば弾け飛んでしまいそうな不恰好極まる有様。
が。内包する熱量は膨大。
即ち、攻撃力だけなら、真に迫る。
「『
今、適当に考えた、恐らく二度と使わないだろう名を口遊みつつ、腕力頼みに横薙ぎ一閃、大鎌を振るう。
甲高く響き渡る、悲鳴じみた風切り音。
爆発にも似た勢いで、身勝手に好き勝手に八方を奔る呪詛。
その制御不能の兇刃は――いとも容易く、街の一角を磨り潰した。
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