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「ありがとうございましたー」


 この近所に住む親戚のところで一泊するらしい甘木くんと別れた後、ケーキ屋で甘味を買い込む。


 出掛けるなら、ついでに買って来いとリゼ大明神閣下より拝命仕ったのだ。

 要はパシリ。


「ったく、アイツくらいだぞ。俺を顎で使う奴なんざ」


 こちとら寧ろパシる側だ。生まれてこの方ずっと。

 ……どちらかと言えば、周りが勝手にやってただけだが。

 中高の時とか特に酷かった。何故どいつもこいつも焼きそばパンを毎日毎日持って来るんだ。別に好きでもなんでもないわ、嫌がらせかよ。


 つーか。


「あんにゃろう電話に出やがらねぇ」


 さては寝こけてるな。人をパシっておいて自分は居眠りか、良い御身分だ。

 畜生め、帰ったら覚えてろよ。夜食に添えるホットミルクを適温より少しヌルくしてやるぜ、ふはははは。






 思いがけず暇になったので、ぶらぶらと街を練り歩く。


 流石ヨコハマ・シティ。甲府とは栄え方が段違いだ。

 ぶっちゃけ人とか建物とか車とか信号とか、何もかもが多過ぎて鬱陶しい。八割くらい液状化しねぇかな。


「いっそ空でも飛べりゃ良かったんだが」


 道具や機械に頼らず、身ひとつでフライアウェイ。人類の夢だよセンセー。

 飛行能力とか、実はバカみたく希少らしいけども。


「けど、そう言や、ヒルダは飛べたな」


 なんとはなし、頭上を仰ぐ。

 タイミング良く、当のヒルダが宙空を舞っていた。


「ちょっぴり羨ましいぜ。アイツの『空想イマジナリー力学ストレングス』が習得者以外の生物を対象に出来ないスキルじゃなきゃ、俺も一度くらい相伴に与り――待てや」


 二度見。見間違いではない。

 何故、吉田共々ロシアでチュパカブラ・ハンティングに勤しんでる筈のヒルダが、横浜ここに居るんだ。





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