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胸中を駆け巡るコレジャナイ感。
落胆の溜息混じり、二秒で叩きのめした不審者連中を武装解除の後、控室の隅に積み上げ、血塗れの男性へと歩み寄る。
「もしもし。もぉしもーし」
あかん、お亡くなりだ。
脳幹に一発。こりゃプロの仕事ですね、中々に見事なワザマエ。
取り敢えず『ウルドの愛人』を使い、良さげな塩梅に過去を差し替える。
ほれ起きろ。死んでしまうとは情けない。
「う、うぅ……」
「ぐもーにん。いい夢見れたか?」
なんか叫ばれて、そんで撃たれた。
「落ち着いたかよセンセー。良かったな、危うく人殺しになるとこだぞ」
「ああ……わ、私は、なんという……本当に申し訳ないことを……」
まさかワンマグ撃ち尽くすとは。テンパり過ぎだろ、このオッサン。
尤も全弾、ものの見事に射線外れてたけど。カートゥーンのお巡りさんかよ、笑える。
「つーか、さっさと彼女達を診てやったらどうなんだ? アンタ製作者だろ」
差し替える前は血糊べったりで気付かなかったが、オッサンはシンギュラリティ・ガールズの生みの親にしてマネージャーの……ナントカ博士だった。
この人の顔写真と簡単なプロフィールもパンフに載ってたのだ。ほぼ読んでないけど。
ともあれ博士はハッと我に返り、床に寝かせたガイノイド達をパソコンと繋ぎ、診断ソフトらしきものを起動させる。
俺はと言えば、それが終わるまでの暇潰しに不審者連中を改めて縛り上げ、完全に動きを封じた。
「コイツ等は? お友達がライブ前の応援に来てくれたにしちゃ物騒なナリだな」
サイレンサー付きの拳銃、電子機器を騙くらかすためのハッキングツール、果ては対マシナリー系クリーチャー用のパラライザーまで。
バラした所持品の一部を眺め、その物々しさに口笛を吹く。
「……汎用型AIの技術を狙った、どこかの国の工作員だろう」
「ふーん」
AI技術狙い、ね。本当にそれだけか?
口振りや表情から察するに、まだ何かありそうだが。
ただ、自分で聞いといてアレだけど、ぶっちゃけ興味ねー。
しかし。
「狙われてんの分かってて無防備過ぎだろ。当の本人達に戦闘用プログラムくらい組み込んどけよ」
「そんなことをすれば、この子達が兵器として扱われてしまう。争いの道具になど、させるものか」
あ、そ。如何にも平和主義者な優男の言い分って感じ。つまんね。
第一それで死んでちゃ世話無いと思うが。
「……良かった。パラライザーの過負荷で強制シャットダウンを起こしただけみたいだ。すぐ再起動してやるからな」
静かに胸を撫で下ろし、結構な勢いで空間投影キーボードを叩く博士。
そう間を置かず、人形同然に静止していた五人が、次々と目を開け始めた。
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