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「おーい、おーい! 月ちゃん、つーきちゃーん!」


 レポート提出のため大学を訪れたら、チャラ男こと吉田が駆け寄って来た。

 ちなみにリゼは家で寝てる。今日の講義、アイツは午後だけだし。


「フゥゥー! さあ月ちゃんも、フゥゥー!」

「誰がするか」


 朝っぱらから鬱陶しさ全開のハイテンション野郎め。

 向こうの噴水にでも頭を突っ込んでやれば少しは落ち着くだろうか。


「がぼがぼがぼがぼ」






「ガチで死ぬかと思ったナリ」

「そうか心配するな。あらゆる生命の目指す終着点こそ死だ」

「ズッ友が辛辣だお! 十年来のマブになんたる仕打ち! 俺ちゃん、そんな子に育てた覚えはありませんよ!」


 育てられた覚えもねぇし、第一てめぇと知り合ったのは大学に入ってからだっつの。

 過去の捏造はやめろ。


「うっうっ……あ、ところで月ちゃん、例のモノが手に入ったぜ!」

「あァ?」


 雑な泣き真似を適当に打ち切り、ケロッと元通りになる吉田。

 芝居やるなら、もう少し真剣にやれや。


 てか例のモノ? なんのこっちゃい。


「ほらコレ、来週開催のシンギュラリティ・ガールズのライブチケット! 月ちゃん、行きたいって言ってたべ?」


 そんな記憶は一切無い。

 シンギュラリティだかソサエティだか知らんが、名前すら今初めて聞いたわ。どこの誰よ。


 大体、俺はアイドルだの芸能人だのに良いイメージ自体ナッシング。どっかの傍迷惑な探索者シーカーの所為で。

 にも拘らず、ファンの山に混ざってサイリウムライトを振り回せってか。馬鹿も休み休み言え。


 とどのつまり、差し出されたカラフルなチケットには、何の魅力も感じない。


 恐らく、他の知人との遣り取りを勘違いしているのだろう。コイツ無駄に顔広いし。

 即、突き返すべく動くも、その前に吉田が素早く踵を返した。


「そんじゃあ月ちゃん、楽しんで来てくれな! 本当は俺ちゃんも一緒したかったけど、もう日本を発たなくちゃならなくてさ! 当日は俺ちゃんの代わりに花束のひとつも贈っといちくりー!」


 駆け出す吉田。足はえーなアイツ。


「おい待てレジェンド・オブ・スットコドッコイ、こんなもん要らん。そもそも何処に向かう気だ、お前」

「ちょっと知り合いと、ロシアの山奥までチュパカブラ探しに!」


 …………。

 あの世紀のアホに申し立てたいことは多々あれど、取り敢えずひとつ。


 チュパカブラの目撃情報が寄せられてるのは、主に南米だぞ。





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