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見合い、延いては婚約が嫌なら、先んじて結婚しちゃえば良いじゃない作戦。
アントワネットさんも驚愕の、正直だいぶ知能指数が低い思い付き。
リゼは乗り気だったが、地元で七面倒な手続きに奔走した苦労を振り返ると、もう少しスマートな方法があったのではと思えてやまぬ。
――大体こんな、紙切れ一枚で容易く解消出来る薄っぺらい間柄に、如何程の価値があると言うのか。
事実、日本だけでも軽く三割以上が離縁の道を辿っている夫婦関係より、身命を預け合うパーティの方が明らかに強い繋がりだろうに……世間様の基準は意味不明だ。
尚、各方面の登録変更に関する手間を些少なり減らすため夫婦別姓としてある。
つか『藤堂リゼ』も『榊原月彦』も、しっくり来なかったんだよな。
あとアレだ。こうなると、いっそ一緒に暮らした方がラクなもんで、現在引越し準備中
。
あの事故物件も正式に譲り受けた。不動産屋は漸く高枕で眠れると狂喜乱舞してた。
………………………………。
……………………。
…………。
探索者支援協会日本本部B棟、地下五階。
まるまるワンフロアを抜き、対ダンジョン加工済みの装甲板で余さず覆った、
武器の火力や攻撃範囲、防具の耐久性などを測るための屋内施設。
聞けば、かの沈黙部隊も特殊訓練の際は此処を利用するらしい。
まあ連中の兵装を、例えば自衛隊の演習場あたりで使おうものなら、周囲一帯が瞬く間に更地だし。
「逆に言えば。この壁や床は、山野を消し飛ばす攻撃に耐えられるワケか」
コツコツと、拳で装甲板を打つ。
硬く粘り強く、弾力まで備えた金属。
しかも、今し方の戦いの傷が既に直ってる。
リゼの大鎌と同じ、自己修復機能付きか。アレが壊れたとこ見たことねーけど。
「豪血――」
動脈に灯る赤光。深く腰を落とし、握り締めた拳を引き絞る。
息を吸って、吐いて。それを三度、繰り返して。
「――『深度・弐』――」
音など軽く置き去る速度で以て、一打を放つ。
防具も纏わず『深度・弐』の膂力を振るったことで、ほぼ肩口まで粉々に砕け散る右腕。
その代償の見返りは、同じく砕けて四散した、厚さ三メートルの装甲板が一枚。
「く、くくっ……ハハハハハハッッ!! ブッ壊すのは気分良いなァ!!」
腹の底より込み上げる笑いの合間に、
見る見る塞がる外傷。元の形へ繋がろうと体内で這い回る骨の感触。
痛みの度合いで治癒の進捗を検めつつ、踵を返す。
「強かったぜ、アンタ達。流石は
「〔ぐっ、ぅ……〕」
うつ伏せに倒れ伏し、微かな呻き声を繰り返す
「でも足んねェわ」
具体的には殺意が。殺す気で来いよ、殺す気で。
だから対人戦は、つまらんのだ。
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