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「そうだ。私だけフライングになってしまいましたけど、初めての方も居ることですし、自己紹介しませんか?」


 ひと頻り飲み食いが落ち着くと、大叔母様もといカルメン女史が、そんな提案を挙げた。


「オーケー。んじゃ俺からな」


 ちょうど手持ち無沙汰になりそうだったタイミング。周りを良く見てる人だ。

 こういう部分はリゼも通ずるところがある。やっぱ育ちかね。


「と……あー、今の探索者シーカーネームは……リゼ」

「週刊少年ジャップ」


 お、それそれ。

 よく覚えてるな、お前。俺本人は名前変える度、秒で忘れるのに。


「〔なんだ、その巫山戯た呼称は〕」


 トランスレーションアプリ越しに再度名乗ると、ウェイが渋面を作る。

 広東語だと、どう訳されるんだろうか。


「〔迂闊に本名を出すのは危険なんだよ。ネットリテラシーを考慮した結果さね〕」

「〔……あれだけメディアに晒されておいて……意味が分からん〕」


 宇宙人でも見るような目を向けられた。

 国際文化交流、難しい。






「では改めまして。二〇六七年度Dランキング上半期、第九位。六趣會『天道』カルメンです」

「〔同じく八位。中国迷宮軍上尉、メイウェイ〕」


 優雅なカーテシーにて一礼するカルメン女史。

 転じて、無骨な抱拳礼を取るウェイ

 挨拶ひとつでも性格出るもんだな。いや、お国柄か?

 尤もカルメン女史の郷里くには、本名を聞いても皆目見当つかんが。


「……七位。榊原リゼ、所属フリー」

「あァ? おいおいリゼ、まさかそれだけか? こちとら新参者なんだ、もうちょい印象良くする努力しようや」

「嫌よ。てか開幕一番で扉を蹴破ったアンタにだけは言われたくない」


 にべも無い。

 そして返せる言葉も無い。


「リゼちゃんったら暫く見ない間にやさぐれて……んー、いえ、元々こんな感じでしたねぇ。楚々と振舞うのが上手だっただけで」

「なんともなんとも。無愛想さは灰銀と張る嬢ちゃんだな」


 三つ子の魂百までってか。






「俺様が現ランキング第三位! 六趣會『地獄道』シンゲンだ! でも前回は二位だった!」


 満を持して、とばかりに威風堂々と名乗りを上げた、カルメン女史の隣に座る大男。

 声抑えろ。耳痛いわ。


 尚、五位と六位は既に紹介済み。

 それぞれアメリカ人のオッサンと、ロシア人の爺さん。

 彼等が席を立った際、ちょうど新造防具の納品日確認メールが届いたんで、ぶっちゃけ聞いてなかった。


 四位に至っては未だ姿を見せておらず、来るかどうかも微妙。

 硝子がらすという日本人らしい。硝子しょうこじゃねぇのな。


「で、こっちの寝てるのが第二位! 六趣會『畜生道』ハガネ! でも前回は俺様が二位だった! あと五点、あと五点あれば!」


 だから声抑えろ。

 順位落ちたの、どんだけ気にしとるんだ。


「むにゃ……寝てない、寝てない、わ……すやぁ」


 ガッツリ寝てんじゃねーか。

 しかも畜生道て。確かに六趣とは六道の別称、その名を冠した六人組なら一道ずつ受け持つのも道理だが、餓鬼道と並んで最悪な字面を割り振られたなアンタ。


 …………。

 つーか。え、ちょい待ち。


「アンタ等のどっちかが一位じゃ、なかったのか……?」


 他はまだしも、この二人は明らかに――のに。





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