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「ヘイ、リゼちー。俺達が獲りに来たドロップ品を教えてくんなまし」
大鎌はメンテナンス中、スライムスーツはチューンアップ中につき、代用装備としてロックバンドの女性ボーカルみたいな服にマゼランチドリを佩いたリゼの肩を揺する。
振り払われた。
「音声サービスじゃないのよ、私は。腕の端末は飾りなワケ?」
それもそうだ。
「あと前にも言ったけど、籠手で私に触らないで」
いちいち外せと仰るか。めんどくさ。
心配せずとも果心がキッチリ調整してくれたから、俺に害意が無ければ触ったところで髪の毛一本斬れねぇっつの。
つまり。
「お前が樹鉄刀で怪我するとか絶対に有り得んぞ」
「そんなの分かってるわよ」
亜空間ポケットから取り出した板ガムを咥えながら、赤い瞳を俺へと向けるリゼ。
「籠手越しに触られること自体が嫌なの」
ですか。
「あー、と……悪皿の髪が五十束、スラッシャーの鋏が七本……」
腕輪型端末が表示する空間投影ディスプレイをスクロールし、リストを読み上げる。
今回、俺達が此処――難度六ダンジョン軍艦島を再び訪れた目的は、主に素材集め。
樹鉄刀以外、殆ど全損した装備一式を作り直すため、必要な材料を獲りに馳せ参じた次第。
長丁場のアタックに於いて、良質な防具は必要不可欠。
攻防一体の『豪血』『鉄血』並行発動は纏刀赫夜じゃなきゃ出来んし、アレ常用可能なほど燃費良くねぇし。なんなら七形態で一番の大食らいだ。
何より、切り札をポンポン出すとかカッコ悪い。
ちなみに、スカルマスクだけは速攻で新調した。
この左右に開くギミック。マストアイテムですよ、こいつは。
……しかし。
「カシマレイコの脊柱が四本、テケテケの指が二十本、姦姦蛇螺の肋骨と鱗が――」
「聞けば聞くほどグロテスクなラインナップね」
全くだ。エド・ゲインかっつーの。
が、致し方ない。
俺にとっては、まさしく最良の素材なワケだし。
スロット持ちの中には、特定系統の素材だけで完全統一した装備品を用いた際、性能以上の力を引き出せる特質の持ち主が極々稀に居るらしい。
その条件ってのが、他ならぬ蒼い血。
片や二千人に一人のスロット持ち、片や全世界に数百人しか居ないタイプ・ブルー。
双方を併せ持つ該当者が少な過ぎて、殆ど世に出回ってない情報。
実際、俺も果心に聞くまで初耳だった。
で、調べた結果、俺は怪異・都市伝説系に属する女怪と極めて相性が良く、統一装備を身に着けた場合、カタログスペックを何倍も凌ぐ向上が見込めるとか。
こいつは難度九ダンジョンの最深部、七十番台階層でも通用する数字だ。
あのアステリオス・ジ・オリジンの攻撃にも耐え得るだろう。利用しない手は無い。
……ただし、怪異・都市伝説系クリーチャーは、アイテムドロップ率が著しく低い。
重ねて俺の標的は女怪。なまじ人間に近いフォルムゆえ、リストにも挙がってる通り、猟奇的な素材が大半を占める。
必然、在庫を抱えた企業や同業者など皆無。
欲しければ外注するか自分で調達せねばならず、こうしている。
とは言え、別に不満は無い。
素材蒐集も
第一、どうせシャバに居ても群がる人人人で不快な思いをするだけだ。
寧ろ丁度良かったわな。
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