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 …………。


 東京都新宿区、攻略難度八ダンジョン『魔界都庁』。


 ゲートの所在は名が指し示す通り、都庁舎内。

 その特色を簡潔に言い表すなら、数多の竜型クリーチャーが席巻する魔窟。


 竜とは言うに及ばず、人間が想像する『最強』の概念のひとつだ。

 故にこそ強大で、同階層帯の他系統クリーチャーと比較しても、一枚抜けた戦闘力を持つ。


 取り分け、イギリスの難度十ダンジョン『アヴァロン』で観測された『ドラゴン』は、日本の『白面金毛九尾の狐』と同じ討伐不可能指定クリーチャー。

 俺の憧れだった初代Dランキング一位の英傑、斬ヶ嶺鳳慈が手も足も出なかった災厄と同等の存在。


 素晴らしい。いつか戦ってみてぇ。

 そう――


「――こんな連中じゃ、全然物足りねぇからなァ」


 魔界都庁、六十八階層。

 月より大きな星が幾百と煌めく幻想的な風景が際立つ『星夜エリア』の中でも、図抜けたクリーチャー出現率を誇る危険地帯。


 尤も……数ばかり揃えたところで、なぁ。


「何が竜だよ。三下共が」


 周りに散らばる無数の魔石のひとつを、ぞんざいに蹴り飛ばした。






 果心による調整と仕上げが施された、新生樹鉄刀。銘は……あー、なんだっけ。

 ま、いいや。兎に角、そのデモンストレーションに選んだテスト地が、何を隠そう魔界都庁。


 …………。

 いや。正確には同じく東京所在の高難度ダンジョン、難度七の『スカイツリー』だったんだが……あそこは。三日前くらいに。

 所要時間、約一日。早く片付き過ぎて不完全燃焼になって、急遽ここをハシゴした次第。


「ホント、信じらんない……難度七をクリアした足で難度八とか、頭イカれてる……青木ヶ原で自分が何度も死にかけたこと忘れたのかしら……」


 大鎌を抱えて瓦礫に腰掛けたリゼが、ボソボソと愚痴ってる。

 人聞きの悪い。ちゃんと休息は挟んだでしょうが。探索者支援協会が設定した最低二日のインターバルに合わせて、きっかり四十八時間。


 てーか。さも他人事みたく言いますけどねキミ。


「お前がスカイツリーのクリーチャー共を鏖にしちまった所為で、ロクに樹鉄刀コイツの試運転が出来なかったんだろうがよ」


 挙句、此度の道中でも遭遇したクリーチャーの七割はリゼに持ってかれてる。

 絶対的に射程距離が違い過ぎるんだよな。しかも最後のスキルの恩恵で、益々間合いが伸びたし。


「仕方ないじゃない。私はアンタと違って、習得したばかりのスキルを簡単に使い熟せるほど頭悪くないの」


 練習よ練習、と悪びれもせず肩をすくめるリゼ。

 いや、そいつはいいけど文脈おかしくね? 俺、今なんで貶されたん?





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