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〔月ちゃん……〕


 ……?


〔月ちゃん……俺ちゃんの声が聴こえるか、月ちゃん……〕


 なんかミスター・スットコドッコイこと吉田の声がする。

 しかし姿は見えん。何処だ?


〔俺ちゃんは今、月ちゃんの心に語りかけてるんだぜ……〕


 …………。

 何言ってんだコイツ。バカなのか? バカだったな。


 大方、俺の体内ナノマシン越しに通話でも入れてるんだろ。

 手の込んだジョークかましやがって。いつパスワード割り出した。


〔ファミチキください〕


 こいつ直接脳内に……!?


 嘘だろオイ、こりゃマジモノだ。

 念話系のスキル? いや、吉田の奴はスロット持ちじゃない。

 なら一体どういうカラクリだ。スキル以外の超能力とは興味深いな、面白れぇ。


〔分かってくれたなら本題に入るぜ。実は俺ちゃん今、異世界に居るんだ〕


 ほう異世界。

 ダンジョンも一種の別世界だが、ニュアンス的に違う物を指してるっぽい。

 第一、スロットの無い吉田じゃダンジョンに入れんし。


〔いやー。なんか街中歩いてたら、偉っそうな髭のキングと外面ばっかで性格悪そうなプリンセスに召喚されちって。で、世界を救えうんぬんかんぬんよ〕


 なんつうテンプレートな異世界転移。最早テンプレート過ぎて逆にレアだ、半世紀前のラノベか。

 勿論、普通なら与太話と一笑に付すところ。しかしコイツの場合、どんな荒唐無稽も有り得ないとは言い切れんところがある。


 で。その言葉を額面通りに信じるなら、絶賛珍体験中だろう稀代のアホが、わざわざ俺に連絡して何用か。


〔そーそー。実は俺ちゃん、月ちゃんに頼みがあるのよねん〕


 んだよ。日本に戻る方法でも考えて欲しいのか?

 まあ、戻りたいなら吉田が召喚された場所まで行けば過去の可能性を見通せる。そうすれば『ウルドの愛人』で差し替え可能だ。


〔春休み明けまでにはラスボス倒して日本に帰るから、その間、俺ちゃんの代わりにバイト出てくんね?〕


 …………。

 さては異世界ナメてやがるな、このワールド級アンポンタンのチャラ男が。





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