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「ただ屍の山を築き」
極限まで研ぎ澄まされている。
そう思っていた集中が、更に深く、奥へと沈む。
「血河を揺蕩う」
身体の外、周囲の空間にまで神経が通ったかの如き鋭敏。
この階層全体を流れる空気の微細な動きすら、完璧に感じ取れる。
「荼毘は激しく」
あれだけ狂わんばかりだった昂りが、急速に凪いで行く。
「飢えも渇きも満たされず」
当然と言えば当然。
今、俺の内を渦巻くのは、激情などという余計なものを抱えていられないほど膨大な情報。
「遍くを喰らい、呑み干す」
身体が軽い。
相当量の血を削ったと言うのに、まるで気だるさを感じない。
「死が道を断ち切るまで」
寧ろ――腹の底から力が溢れてくる。
〈……ナンダ〉
ミノタウロスは動かない。
唯一無事な額の金眼をギョロつかせ、たじろいだ風に俺を見ている。
〈ナンナノダ、コレハ……〉
どうしたどうした。さっさと構えろ。
ぼんやり突っ立ってたら、瞬で終わるぞ。
〈コンナモノ……
折角の披露目だ。
俺を失望させてくれるなよ、好敵手。
さあ。始めよう。
「豪血――鉄血――」
この土壇場まで、実行どころか可否を考えたことすら無い試み。
だけれど何故か、ハッキリ分かる。
可能だ、と。
「――『深度・参』――」
〈……………………アア。ソウカ〉
〈コレガ、恐怖カ。面白イ〉
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