242
「ハハッ、クソが」
畜生め。些か体勢が悪かったとは言え、可能な限り衝撃を流した上でコレか。
咄嗟にダメージの大半を腕だけで引き受けなかったら、アバラや脚までイカレて詰みだった。
骨が粉砕した上、ブチ壊れた籠手の破片が突き刺さって内外共々ズタズタになった右腕。千切れず済んだのは単なる幸運だ。
刀身に深々とヒビが奔った樹鉄刀をどうにか握り締めたまま、残った左腕でリゼを抱え、退く。
その最中、横薙ぎの追撃を受けたが、何も無い空中で弾かれた。
「……最適な位置と角度を選んだつもりだったんだけどね」
そんなヒルダの独言と併せて散らばる、唐突に現れた無数の金属片。
吸撃の盾か。ナイスアシスト。
つーか俺の剣戟も凌ぐアレが一撃でオシャカとは。マジ洒落にならねぇ。
「リゼ、撃てぇッ!!」
背後にリゼを放り投げ、空いた左手に樹鉄刀を持ち替えつつ、叫ぶ。
間を置かず、視界の端で
それを見とめた女巨人は、撃たせまいと距離を詰めるべく、一歩、此方に踏み込んだ。
そこそこ距離を挟んだつもりだったが、俺達の十倍もデカい奴さんにとっちゃ、文字通り、ひと跨ぎ。
「成程。幻覚にハメてた間の行動で、俺達の力は把握済みと」
とどのつまり、間合いと攻撃力の面で最も厄介かつ、俺達の中で最も倒し易いリゼを真っ先に潰す心算。
実に妥当で順当で適当な判断と言えよう。RPGなんかでも、大抵は後衛が真っ先に狙われるもんだ。
が、しかし。
「そいつぁ逆鱗踏んでるのと同じだぞ、てめぇ」
有事の備えで具足に仕込んでいた魔石を蹴り上げ、樹鉄刀の柄頭に、かち合わせる。
瞬く間、内包されたエネルギーを食い尽くした奇剣は、脈動と共に新たな刃を生成し、武器としての威容を取り戻す。
「ヒルダ、俺が一撃ハジく。その隙を突け」
「構わないけど、決定打にはならないと思うよ」
「フラつかせられりゃ十分だ」
やり取りもそこそこ、女巨人の斬撃が降り注ぐ。
二刀共々、狙いは俺。そういう位置取りをした。
加えて、だ。
「さっきは無理やり割り込んだ所為でこのザマだが、お陰で分かりやすく骨身に染みた」
速く、鋭く、重く、正確な太刀筋。
しかし言い換えれば、ただ
「幻覚なんぞ使う根性曲がりのくせ、得物の扱いは存外に素直だな」
タイミングを合わせて一刀目は側面を、二刀目は切っ尖を跳ね上げる。
蝿でも払うかのようだった女巨人の目に、僅かな驚愕の色が灯った。
とは言え、右腕を使えない現状では体勢を崩すまでは及ばず。
故、勿体ないけど、そこはヒルダに任せるとしよう。
勿体ないけど。
「よくも盾を壊してくれたね。これが一枚いくらすると思ってるんだ」
〈ガッ……!?〉
纏った力場、少し遅れて衝撃波の二段構えで脛と鳩尾に突き刺さる、残った二枚の不可視の盾。
さぞ痛かろう。現に脛とか肉が抉れてるし。
〈コ、ノ……キサマ、ラァッ……〉
尤も、あんなもの、ただ痛いだけの擦り傷。
フロアボスはダンジョンから直接エネルギー供給を受けている分、通常のクリーチャーより癒えるのも早い。
治癒を通り越した範疇のダメージ。例えば八尺様の時のように腕でも落とさない限り、即座とまでは言わないものの簡単に治ってしまう。
…………。
ま。
「――――ああぁぁぁぁああぁぁっっ!!」
今回は単純に『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます