226
………………………………。
……………………。
…………。
〈raaaaaaaa――〉
鼓膜に突き刺さる高音。
声か、言葉か、或いは単なる音か。
ともあれ、このハウリングの何十倍も耳障りなノイズの音源たる元凶を見据えた。
〈rarararaaaaa――〉
「うるせぇ」
五十階層。天獄エリアの終着地。
つまり、ここを守護するフロアボス。
外観はニケードールに近い。
要は、同じく
が――大きさも熱量の密度も、ニケードールとは比較にならない。
「むーむー」
尚、階段を下りる最中、ヒルダの奴がフロアボスの性質や能力をあれこれ喋ろうとしたから、口を塞いでおいた。
侘び寂びを解さないドイツ人め。ワサビ食わすぞ。
「ったく。鉄火場に臨む上で念の入った下調べなんざ馬鹿のやることだぜ。楽しみが減っちまうって分からんのかね」
物言いたげな視線が二人分、背中に突き刺さる。
抗議なら書類に必要事項を記入して七番窓口まで持って行きなさい。
後日、気が向いたら応対するかも。
「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する。これぞ対クリーチャー戦の醍醐味だろ」
「ザ・行き当たりばったり」
仰る通りだ、リゼ君。
打算も勝算も持ち合わせず、半歩の過ちが命すら落としかねない戦いの中で、刹那の狂気に身を浸す愉しみ。
やめられない止まらない。
「楽しめなけりゃ意味がねぇ。これから
……あぁ、いや、待て。
「前言撤回だ。名前だけは知っときたい」
リゼに目配せし、ヒルダの口枷を外させる。
全く、出来た相棒め。次の飯は一品オマケしちゃう。
「ヒルダァ! コイツの名は!」
「まずは人の口を塞いだことを謝って欲しい。乙女の唇をなんだと思ってるんだ」
「ごめんなさいね」
ほら謝ったぞ。早よ教えろ。
「…………『アンジェロ
何が気に入らないのか、不承不承と答えるヒルダ。
お望み通り謝ったろうが。
「Ⅲ……
「単純に全く別種のクリーチャーとネーミングが被った結果のナンバリングだよ。
成程。甲府迷宮のベヒ☆モスと同類か。
いっそ違う名前にすれば良かったろうに。名付け親は何故アンジェロに拘ったんだ。
「ちなみにⅡは存在しないみたい。ⅠとⅢと
肩をすくめながら補足するリゼ。
ややこしい。数字を飛ばすな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます