218
――青木ヶ原天獄、二十五階層。
「呪血」
動脈を奔る黒い光輝。
ほぼ全身覆う装備越しには、薄らと闇を纏っているかのように見えるであろう予備動作。
幾重にも捻じ曲がり、歪み、割れ、砕け、圧し固まり……なんかこう、兎に角
時々、表現に困るのだ。怪物達が阿鼻叫喚、悲鳴と金切り声を上げて五体捻転するサマは。
「面白い発動条件だよね。自分が相手にじゃなくて、相手が自分に向けてる負の意識や認識の分だけ呪詛の強度が増すなんて」
「その所為で蟲や機械には効かねぇけどな」
あいつ等には、そもそも意思ってものが無い。あったとしても極端に希薄で、媒介たり得ない。
「ところで、キミがそれを発動させてから微妙に動き辛いし、地味に身体も痛むんだけど……」
「『呪血』の触媒は俺への敵意、殺意、恐怖心、対抗心……そういう類の意思だ。ま、お前の場合は対抗心ってとこか」
断末魔が尽きた頃合『呪血』を解く。
五十くらい倒したかな。魔石拾い、めんどくさ。
「『消穢』は持ってないのか? よっぽど強烈な呪いでもなければ効かなくなるし、他にも色々便利だぞ」
「簡単に言うけど、それを入手するのがどんなに大変だと……」
欲しいは欲しいワケか。ひとつかふたつ、スロットに空きを残してると見た。
俺が『ウルドの愛人』で『消穢』入りの選択式スキルペーパーをドロップすれば一発だが……生憎スキル関連の過去差し替えは一度きりと決めてるんでな。
「頑張れ」
「……?」
なんとはなし応援の言葉をかけると、怪訝な眼差しを返された。
「お。ギフトボックス」
落ち穂拾い的な感じで魔石拾いに勤しんでいたら、掌サイズの
開けるまで何が出るか分からない、びっくり箱であり宝箱。
俺、大好きなんだよね。これ。
「……開けるの?」
反して、あからさまに嫌そうな顔で問うリゼ。
あたりきしゃりき。寧ろ開けない理由が無い。
「ガチャとは引くことに楽しみを見出すもんだ。中身は二の次」
「あ、そ……ヒルデガルド、離れてなさい。
「え?」
継ぎ目に指先を添え、少しずつ力を篭めると、卵の殻が割れるような音。
「何が出るかな、何が出るかな〜」
箱表面を奔る亀裂、漏れ出る燐光。
生命の誕生を思わせる、静謐とした厳かな空気。
そして。
「え?」
「む」
「あぁ、やっぱり……」
階層の三割近くを巻き込み、盛大に爆発した。
「月彦の傍でギフトボックスを開けると、必ず爆発するのよね……」
咄嗟の『
「死ぬかと思った」
吸撃の盾で咄嗟に身を守ったヒルダが、その場にへたり込む。
尚、俺も当然『鉄血』で無傷。
ギフトボックスの開封は大体四度目くらいだが、なんで毎回こうなるのやら。
もう笑うしかねぇな。やっぱり。
「はっはっは」
「毎回言ってるけど、笑えないから。爆発オチなんてサイテー」
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