198・閑話6
疑いすらしていなかった。
今日まで、ずっと。
アタリと呼べるファーストスキルを手に入れ、七ヶ月目で十階層のフロアボスをソロ討伐し、晴れてビギナーを卒業。
三年目に貯めた金で第二スキルを習得。その年の暮れ頃には二十番台階層に狩り場を移し、中堅の仲間入りを果たした。
今の最深到達地点は三十九階層。
周りに対しては謙遜を気取ってたけど、胸の内には常に強い自負を抱いていた。
自分達は、たった六年で四十階層に手をかけつつある将来有望な優れたパーティ。
そして自分は、その頭を張っているのだと。
遠からず、高難度ダンジョンにだって挑める器。
やがていつかは、あのDランキングにも名を刻む逸材なのだと。
そう信じて、疑いすらしていなかった。
今日まで、ずっと。
三十九階層で、俺達八人はクリーチャーに囲まれていた。
相対する敵の名は『ロボ』。半分が機械と化した身体を持つ、虎よりも大柄な狼。
個々の戦闘能力もさるもの、そこに加えてレーダーや無線機能も併せ持ち、徒党を組んでの集団戦を最も得意とする、八幡反転都市三十番台階層屈指の難敵。
数は二十。苦戦は免れ得ない。
けれど時間をかけて慎重に当たれば、決して覆せない状況では――
「リーダー、不味い! 正位置の『
「なっ……!?」
頭の中で組んでいた段取りが、索敵役の叫びによって崩れる。
援軍を呼ばれた。しかし、幾らなんでも早過ぎる。
たまたま近くに別の群れが居たのか。なんて不運。
どうする。都合五十頭のロボなど相手に出来るワケがない。
逃げなければ。ちくしょう、折角あと少しで四十階層だったのに。
「…………え?」
増援が加わる前に包囲網を破り、退却すべく指示を出そうと口を開きかけた間際。
索敵役の呆けたような声が、妙に耳の奥まで響いた。
「ッ、どうした!?」
「……き、消えた……索敵圏内に雪崩れ込んで来た筈の『
そんな馬鹿な。
八幡反転都市の三十九階層に出現するクリーチャーの中で正位置の『
そして奴等に、瞬間移動や索敵妨害の能力など無い。
だが、なら、何故。
「り、リーダー! 代わりに、また別の反応が三つ! こっちに近付いてる!」
「クソッ、考える時間くらい寄越せってんだ……分類は!?」
方法は皆目見当も付かないが、十中八九そいつ等がロボを斥けたに違いない。
アルカナが示す通り、まさしく戦車の如く頑強な怪物を三十頭、それも僅か数秒足らずで潰滅させた化け物の襲来。
目まぐるしく移り変わる状況に苛立ちを覚えながら、悪態混じりに聞き返す。
「逆位置の『
「何……?」
索敵役が持つ探知系スキル『タロットサーチ』は、一定以上の力を持った生物を二十二の大アルカナに正位置と逆位置を合わせた四十四種へと振り分けて察知するもの。
が、いま告げられた三種に当該するクリーチャーは、この階層には存在しない。
となれば。
「
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