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「……まずは謝罪を」
色々と騒いだ所為でクリーチャーが集まり始めたため、四十階層行きの階段半ばへと場所を移した俺達。
そこで足を止めるや否や、女が神妙な顔で深々と頭を下げた。
「いくらなんでも不躾が過ぎた」
リゼに睨まれて頭が冷えたのか、一見穏やかな瞳の奥に潜んでいた好戦的な色は無い。
「お嬢さんにも大怪我をさせるところだった」
「それに関しちゃ本気で許さん」
腕の三本四本ヘシ折ってケジメつけさせるか。
「いいわよ別に。結果的には掠り傷ひとつ負ってないもの」
お前、なんで微妙に機嫌が良いんだ?
さもありなん。
リゼが謝罪を受け容れたのなら、俺だけギャーギャーと引き摺る理由は無い。
何より先刻の小競り合いも、不完全燃焼だったとは言え中々に楽しめた。
その駄賃と言うのも変な話だが、此度の件は水に流そう。
「君達の寛容に感謝を……昔からの悪い癖でね。気が昂ると、つい噛み付くのを我慢出来なくなる」
「まるで、どっかの誰かさんみたいね」
「おい、そりゃ誰のことを指してやがるのか聞こうじゃねぇか」
なんと失敬な。
俺は我慢出来ないんじゃなくて、ハナから我慢する気が無いだけだ。
「本当なら君との顔合わせも、こんな荒っぽくするつもりは無かったのに……」
曰く、フロアボスを倒したばかりで血に酔ってたらしい。
浮ついた暴力的な気分に後押しされ、予め組んでいた段取りを思わず投げ捨てたとか。
「子供の頃なんか、しょっちゅう誰かを血祭りに上げては、こっ酷く姉さんに叱られたし……」
………………………………。
「
……………………。
「問題を起こしては、稼いだお金を慰謝料に充てて揉み消すこと三回……」
…………。
「流石に国外だと庇い切れないから、くれぐれも大人しくするよう念を押され続けたのに、この始末……」
ふむ。
「てめぇ、だいぶ考え無しだな」
「おまいう」
「喧嘩売ってんのかリゼ」
なんと失敬な、第二幕。
俺は考え無しなワケじゃなくて、ただ己の欲求に身を任せてるだけだ。
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