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「豪血」
迫る六発の小型ミサイル。
その悉くの信管を斬り落とし、不発弾へと変え、適当な方に蹴り飛ばす。
「ン」
立て続けの攻め手。四方八方より此方に狙いを定めた銃口の群れ。
秒間数百発をバラ撒くマシンガン、着弾と同時に周囲を爆炎で埋め尽くすグレネードランチャー、音速の数倍で金属片を飛ばすレールガン……エトセトラ、エトセトラ。
「――『深度・弐』――」
やろうと思えば『鉄血』でも凌げるが、わざわざ装備を痛めてまで受ける理由も無い。
近場のものは斬り伏せ、少し離れたものには指先で弾いた瓦礫の欠片を銃身内に撃ち込んで暴発させ、間合いの外に位置するものは弾道を躱す。
「月彦」
「おう」
そうこうしているうち、溜めを終えたリゼに呼ばれ、その傍らに着く。
幽体時の声は魂に直接響くため、やかましく喧騒飛び交う中でも至極聴き取りやすい。
「――――ああぁぁぁぁああぁぁっっ!!」
寸前で『
獣じみた咆哮と併せ、横薙ぎに一回転振るわれる異形の大鎌。
狂った笑い声にも似た風切り音が撒き散らされ、半径数十メートル以内の全てが焼け焦げ、腐り果て、滅び尽きる。
が、しかし。
「はぁーっ……はぁっ……チィッ」
一瞬で体重一キロ分の骨肉を削った反動、踏ん張りの利かない足腰を大鎌で支えつつ舌打ちするリゼ。
崩壊した街並みが、さながら逆回しの如く、元に戻ろうと蠢いていた。
「この規模で再生持ちかよ。流石は難度六」
「感心してる、場合……?」
階層全域に張り巡らされた各種センサーと武装。
謂わば五十階層そのものと呼ぶべきクリーチャー。荒廃した未来文明都市を思わせるエリアの最後を飾るに打って付けの難敵。
「さて、どうするか」
チマチマとダメージを与えたところで、再生されては元の木阿弥。
ダンジョンから直接供給を受けているボス系クリーチャーのエネルギーは無尽蔵。無策に時間と労力を費やせば、先に息が切れるのは此方側。
尤も、取るべき手など、改めて考えるまでもないが。
「核は十中八九、アレだよな」
階層の中心に聳え、赤い光を鼓動のように明滅させる塔。
ちらとリゼを見遣れば、苦々しげな面差し。
「連発は辛いんだけど……」
「頑張れリゼ、お前がナンバーワンだ」
「意味分かんない……」
そうやって口では愚痴りつつ、迅速に構えを取るところが痺れるぜ相棒。
「――――ああぁぁぁぁああぁぁっっ!!」
数秒後。幾らかのやけっぱちを孕んだ、再びの獣じみた咆哮。
小さな階層なら丸ごと両断する威力と射程を有す極大斬撃――『処徐壊帯』により、赤い塔は単なる瓦礫の山と化した。
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