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京都府八幡市に位置するダンジョン『
全五十階層、難度六。その名が示す通り、二十番台階層以降は全て市街地系のエリアで構成されていることが特色。
そこだけ抜粋すると同攻略難度の軍艦島に似たものを感じるが、あそこと違って面積が広く、最深部への到達には急ぎ足でも一週間、順当に行けば十日以上かかる。
また、奥へ進むほど近未来的な佇まいとなって行くため、雰囲気は寧ろ正反対。
――取り分け、今現在俺達が立つ四十一階層から先は、機械の躯体を持つマシナリー系クリーチャーが席巻する『フューチャーエリア』。
例の如くロクに下調べもしていないが、踏み込んですぐ理解した。
嘗て経験した唯一の四十番台階層である軍艦島の廃街エリアとは、多くを異にする場所だと。
「お腹空いた……」
夥しい物量で押し寄せるクリーチャーと大立ち回りを繰り広げた後、適当に寛げそうな建物を見繕い、一時休憩。
連中を屠るべく、二度『呪胎告知』を放ったリゼが、古びたソファベンチに横たわって呟く。
もし『消穢』が無かったら埃塗れだ。
「一体あたりの強さは三十番台階層の奴等と大差無かったが、とんでもない数だったな」
このエリア、あまり俺との相性が良くない。何せマシナリー系のような自我を持たないタイプのクリーチャーには『呪血』が効かないのだ。
となれば他に範囲攻撃の手段を持たない俺は近接戦で個別に潰さねばならず、しかし相手のバリエーションの多彩さと増殖速度に手を焼き、その結果がリゼの『呪胎告知』連発。
次以降は応援を呼ばれる前に倒さんと、いよいよリゼが胸の脂肪も削らなければならなくなる。
……いや。最近は腰回りにも、前より肉を残すよう調整してるか。
ヒップラインが良い感じになってるんだよな。俺からすれば寧ろ、こっちを削らせる方が勿体ない。
「おーなーかーすーいーたー」
「分かった分かった、すぐ支度するから待て」
テーブルの埃を払い、リゼの圧縮鞄から大型冷蔵庫を取り出す。
中身は主にダンジョン長期滞在者向けの弁当類。蓋のシールを剥がすと、容器に塗布された魔石のエネルギーが熱変換され、凍っていても三十秒あればホカホカに温まる仕様。
曲がりなりにも栄養学部の俺監修によるラインナップゆえ、バランスも良好。
間違ってもリゼに任せてはならない。
「よし出来た。さあ食え」
「いただきます」
綺麗に手を合わせ、軽い一礼の後、推定三人前の特盛焼肉弁当を食べ始めるリゼ。
こういう、ふとした瞬間の仕草に育ちの良さが垣間見えると言うか。やはり、お嬢様なのだと改めて思う。
「おかわり」
「はえーよ」
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