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「身バレしたぁぁぁぁああっ……」


 ロビーに居た探索者シーカー達、延いては一般の方々の殆どに詰め寄られ、握手やらサインやら写真やらを求められまくった。

 その波もどうにか収まって暫し、窓口で苦笑いする受付さんにアタック申請を出し、あまり人気の無い更衣室に入るや否や絶望の声を上げる。


「そりゃねえ。全世界発信で素顔のまま、あんだけ堂々と名乗ればねえ」


 鎧の装着中だった顔見知りのオッサンが、軽く肩をすくめる。


「月彦君、顔立ちとか体格の時点で目立つし。それに今使ってる装備なんて都市伝説系クリーチャー素材のイージーオーダー品だろ? 滅多に居ないよ、そんなレア物でフルセット揃えてる人。ネットで情報集めれば、ホームの特定くらい普通に出来るだろうねえ」


 ネットで確かめたリゼが言うに、既に函館・品川・長崎・甲府で、それぞれ俺を目撃したという情報が出回ってるらしい。


 ……まあ順当な話か。

 長崎では現地の探索者シーカーを集めて殴られ屋みたいな真似してたし。

 函館では延べ数十人の装備を格安で修繕などやってたし。

 品川に至っては、もう今の装備だったし。


「クソッタレ……済まねえオッサン、ゴキゲンで快適な休憩所と遊び場が、俺の所為でっ」

「君は難度四のダンジョンをなんだと思ってるんだ」


 だから遊び場。






 装備に着替え、とぼとぼロビーに戻ると、集まった連中が遠巻きに俺を見、再びざわめき始める。

 ……さっきより増えてね?


「かっけぇ……ああいうの俺も欲しいなぁ」

「無理無理。検証サイト覗いたけど、都市伝説系とか馬鹿高いらしいぜ。似たり寄ったりの性能の装備が二千万くらいで揃えられるのに、三千万はするってさ」

「SRCに出てたってことは、ウチらとキャリアも変わらない筈なのにな。やっぱ金持ちはスタートから違うよなー」


 取り敢えず高価なものを尊んで買ったみたいな口ぶりやめろ。

 俺の場合は素材持ち込みだったから、寧ろ近似性能の枠内で一番安く作れたんだ。

 ホント『ウルドの愛人』て便利。希少なドロップ品も思いのままよ。


「すっかり有名人じゃない。私も写真とか撮って貰おうかしら? きゃー月彦さまー」


 大鎌の石突きが床を叩く聞き慣れた音と共に、半笑いで俺を茶化すリゼ。

 ちくしょうめ、他人事だと思って。


「いつも勝手に撮ってるだろ。しかもSNSになんか上げやがって」

「お陰で今ちょっと炎上中なのよね。暇人の多い世の中だこと」


 ふはははは。ざまあみろ、死なば諸共だ。





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