167・閑話4
――ドイツ、バイエルン州、ミュンヘン。
「ヒルダ? 貴女、何を観てるの?」
金髪を長く伸ばした二十代後半頃の女性。
リビングへと顔を出した彼女が目にしたのは、真剣な様子で空間投影ディスプレイを見据える妹の姿。
「SRC……? アジアの
「
音声同時翻訳ソフトを使いながらの視聴。
ヒルダと呼ばれた、姉と同じ色彩の髪をミディアムショートに切り揃えている二十歳頃の女は、視線を一切画面から逸らさないまま淡々と答える。
「ふわぁ、すごい爆発……相手の人、生きてるの……?」
「勿論。そもそも、この試合で勝ったのは今攻撃されてる方さ」
それを聞いた姉が、まさかと言わんばかり目を丸くする。
けれど妹の言葉を皮切り、実際に動画の中で繰り広げられる圧巻の逆転劇。
欧州人と比べて小柄な印象の強い東洋人らしからぬ巨漢が、その半分近い細身ながらもやはり並外れた体格の持ち主である対手に吹き飛ばされ、投げ飛ばされ、床に叩き付けられる。
さながら、現実に飛び出したコミックス。
沸き立つ観衆。次いで勝者より語られた、ある宣言。
「……ツキヒコ・トードー」
試合開始前は奇妙なフードと髑髏のハーフマスクで隠されていた、猛獣を想起させる端正な容姿。
その口角を凶暴に吊り上げ、不敵に嗤う男の顔を、じっと見つめる妹。
やがて彼女は、握り潰すように空間投影ディスプレイを消した。
「姉さん。実は今、海外での活動申請を出してるんだ」
「え?」
唐突な報告に首を傾げる姉。
少し時間はかかるけど、と前置いた後、妹はこう続けた。
「認可が下りたら、
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