166・閑話3
――東京、某所。沈黙部隊宿舎。
「消耗した物資の目録を作るってのもラクじゃねーな」
「あれ? 利根サン、ここの数字おかしくね?」
「なんだと見せてみろ……げえぇ。クソ、計算やり直しかよ」
溜息混じりにキーボードを叩く強面の男と、狐目の男。
そんな彼等とテーブルを挟んだ対面に腰掛けた、手伝う素振りすらも見せない、黒百合の眼帯を右目に宛てがった女。
その眼差しは、手元に表示された空間投影ディスプレイにのみ注がれている。
「……オイ五十鈴。暇なら手ぇ貸せ」
唸るような強面の言葉にも一切無反応。
やれやれと、狐目が肩をすくめる。
「無理っしょ利根サン。五十鈴チャンてば年明けに戻って来てからこっち、ずーっと動画見てるし」
「知ってる。今年度のSRC本戦だろ。とても新人とは信じられん獣みてえな野郎が、ぶっちぎりで優勝してたやつ」
「そそ。どうも五十鈴チャン、すっかりその彼のファンになっちゃったみたいで」
そんな遣り取りの傍ら、眼帯の女が観ているのは決勝戦。
所属先の大手プロダクションが潤沢な資金で買い集めた七つのスキルを操るアイドル
もう両手両足の指を合わせても足りないくらいは再生しているにも拘らず、彼女は一挙一動も漏らさないとばかり、片方だけの目を瞬きもせず見開いていた。
「凶星……ちかっぱ、いかしとぉ……」
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