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〔月彦さん、月彦さんっ! SRCの試合見ました、本戦進出おめでとうございますっ!〕
つむぎちゃんや甘木くん達と連絡を取り合うことが増えたため、とうとう不便を見兼ねて買い替えたスマホ。
店では最新式の指輪型やチョーカー型など色々と勧められたが、通話の際に指や首から骨伝導で音を送るスタイルが馴染まず、前と同じく旧来の薄型を選んだ。
やっぱ受話口を耳に当てて話すのが一番しっくりくる。
〔すごくカッコ良かったです! あんな広い会場を箱庭みたいに駆け回って、いつの間にか周りの人達が倒れて!〕
あれは必殺『恐ろしく速い手刀』だ。とどのつまり、ただの当て身。
緩急つけながら会場内を一巡し、全員の後頭部に一撃ずつ叩き込んだ。規定の防具は首が無防備だったし。
全力で走ったワケではなかったため数人くらいは見逃さず対応するかと思ったが、結果は御存知の通り。
尤も、俺の足捌きとポジショニングなら三十番台階層のクリーチャーだろうと容易く懐に潜り込める。下位の
〔あの、本戦のチケットって、まだ売ってるんでしょうか!? 会場、東京ですよね! 私、観に行きたいです!〕
興奮気味な、身を乗り出す姿が電話口でも如実に伝わるような語勢のつむぎちゃん。
近頃この子アグレッシブだな。大変結構。
しかし生憎、本戦チケットは五ヶ月前に売り切れてる。例年より遥かに早い。
なんでもアイドルと兼業してる
とは言え、本戦出場選手の俺は特別席のチケットを何枚か貰ってるので問題無し。
御家族分、郵送しといた。
〔スカル・スカーは無いんじゃない? うん、正直無いわー〕
つむぎちゃんと殆ど入れ替わりで電話を掛けて来たリゼが、開口一番に無礼を宣う。
「仕方ねーだろ、登録時間ヤバくて考える暇が無かったんだよ。それに、どうせ名乗るのは今回限りだ」
〔にしたって、ねぇ?〕
腹立つなコイツ。
「チッ……んで、そっちの調子はどうなんだ? 実家をエンジョイしてるか?」
〔冗談。息詰まって死にそう、今すぐそっちに戻りたいわよ〕
溜息を添えた言葉の端々に覗く心労と辟易。
微妙に声を潜めてるあたり、この会話も親御さんには聞かれたくない模様。
「ところで本戦のチケット要るか? 欲しいなら送るが」
〔貰っても行けないわ。下らない顔出しだの挨拶回りだのに付き合わされて忙しいし〕
ひどく平坦な返答。
まあ分かってた。リゼにもリゼの都合がある、仕方ない。
〔行きたかったなぁ……ごめん、もう切る〕
母親と思しき、遠くからリゼを呼ぶ声。
多忙の合間を縫い、連絡を寄越したらしい。
「おう。無理して身体壊すなよ」
〔ん――あら叔父様、御久し振りです――〕
…………。
通話切れる直前、物凄い猫撫で声が。ありゃ確かにストレス溜まりそうだわ。
戻ったら優しく接してやろう。
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