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 SRC。シーカー・ルーキーズ……ナントカの略称。鉄骨鉄筋コンクリート構造のことではない。


 十年ほど前から年度毎開催されるようになった、探索者シーカー同士のバーリトゥード。

 ルーキーズの名が示す通り、参加資格を持つのは協会登録から三年以内の新人。

 まあベテラン同士がガチでやり合ったら真面目に死人出るし、場合によっては会場も更地と化すからね。しょうがないね。


 大まかな流れは、毎年五月から十二月にかけて八回の予選大会を開き、それぞれの勝者が年末開催の本戦にて競い合い、覇者を決めるというもの。


 賞金は本戦進出で二百万円、優勝者には一千万円。

 登録三年以内となると、殆どの探索者シーカーは十番台階層が活動区域の下位。そんな連中にとっては相当な大金。


 予選含むと例年千人近くが参加する一大イベント。

 正直、対人戦はあまり興味無かったが……どうせ暇だし、冷やかしに出てみるのも悪くないか。






 SRCの予選は、死ぬほど分かりやすいバトルロイヤルだ。


 東京ドームの約二倍に相当する面積の特設会場に参加者を集め、最後の一人となるまで戦わせるシンプルな蠱毒形式。

 ルールは規定の防具着用と、使用武器の制限のみ。

 スキルあり、反則無し。目潰しも噛み付きも金的も一切咎められない。流石に殺生沙汰は避けるよう予め注意を受けるが。

 より実戦に近い戦いを、というのが本大会のコンセプト。野蛮だなんだと批判は多いけれど、それ以上に支持も多い。

 スロット持ちなら、大抵の負傷は回復薬ポーションで治るし。


 尚、予選の時点で公式のライブ中継やネット配信が入る。客席も基本的に満員御礼。

 何せ一般人が探索者シーカーの戦いを、スキルという異能を間近に出来る数少ない機会。加えて百人以上が一斉に鎬を削る合戦場の如き様相は、本戦ともまた違った迫力と臨場感を味わえるとかで大人気。

 それにバトルロイヤルは番狂わせも起こりやすい。めまぐるしく二転三転する展開は映画で言う終盤のどんでん返しさながら、さぞ手に汗握るだろう。


 …………。

 安くないチケット代を払った観客連中には、悪いことしちまったかな。


〔け……決着ぅぅぅぅッ! まさかまさかの、百五十人が瞬殺だぁぁぁぁああッ!!〕


 試合開始前、解説者を交えた展開予想などのトークで場を温めていた実況者が告げる、絶叫じみた終了宣言。

 それを受け――死屍累々の有様となった会場を一瞥した後、俺は『豪血』を解く。


〔各々が優勝候補にも挙げられる実力者達の集結した、第九回SRC予選最終試合! 圧倒的な力で下馬評の一切を覆しHブロックを制したのは、締め切り寸前での飛び入り参加を決めた一五三番! 完全なるダークホース! エントリーネーム『スカル・スカー』!〕


 本名は個人情報流出が怖いため、マスク装着の上で適当なハンドルを使わせて貰った。

 髑髏スカルスカー。いくらなんでも安直過ぎた気もするが、別に構わんだろう。





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