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「ヒャッハー! 試験だ試験だー!」
ハイテンションでタップダンスなど決め、本日からの期末試験を高らかに宣言する吉田。
ホントなんなんだコイツ。
「……なあ、試験の何が楽しいんだ?」
「えぇ!? 月ちゃん楽しくないん!? 変わってるー!」
その言葉、そっくりそのまま返してやろう。
やはりコイツとは、深い部分で一生相容れない気がする。
「ついでに試験が終われば、すぐ冬休みじゃん? 俺ちゃん、年末年始はフィンランドで過ごすんだー!」
ほんの数ヶ月前、海外旅行で死に目に遭って尚、新たな旅行を計画する肝の太さよ。
単なる馬鹿なのか稀代の大物なのか、だいぶ判断に困る。
「何故、試験なんてものがあるのよ」
学食の隅に腰掛け、茫と天井を仰ぐリゼ。
朝に会った吉田とは、まさに雲泥の差なリアクション。
「どうだったんだ、今日の分は」
「……さあ……?」
いつにも増して覇気が感じられない。
昨日やらせた模試の結果を見る限りだと、安全ラインはギリギリ、だいぶギリッギリとは言え確保出来てたと思うが。
「自信持てよ。今回は二週間も前から頑張ったじゃねぇか」
「そうね、頑張ったわ。嫌だもの」
呟いた後、リゼは深く静かに溜息を吐き、聖銀のブレスレットを撫でる。
余程、気に入ったのか、渡した日以来ずっと着けてる。
「留年して大学を辞めさせられるのは嫌。
相変わらずの微妙な家族関係。いいとこのお嬢さんも大変だな。
「本当なら、長い休みの度に帰るのも嫌」
聞けば、年末は流石に帰省しないとマズいらしい。
となると今冬の青木ヶ原行きは、どのみち無理だったワケか。
「いつ出るんだ?」
「休み入ってすぐ。あーもうダブルで憂鬱」
パーカーのフードを目深に被り、項垂れるリゼ。
今日はネコ耳付きか。にゃーにゃー鳴いてみろ、にゃー。
「……去年の今くらい……『消穢』を習得した頃から、やたら見合い話とか持って来られるのよね」
「ほう」
あれには肌質髪質の向上など美容効果もあるからな。
当たり前と言えば当たり前の話だが、容姿にプラス補正をかけるスキルの習得者を嫁に欲しがる奴は多い。金持ちだの権力者だのは特に。
そしてリゼの場合、そこに加えて不老効果持ちのスキルも内定済みときた。
当該スキルペーパーが市場に出回る機会など年に一度あるか無いかの、全世界合わせても習得者は五百人に満たない激レア能力。
引く手数多どころの騒ぎじゃ済まん数字。やろうと思えば長者番付の上位と結婚だって望めるだろう。
老いない美女とか男にとって、あんまりにも都合良すぎるからな。
…………。
つーか、そうだ。
「スキル云々で思い出した。お前いつスキルペーパー使うんだ?」
「一生のことだし、最後の一枠なのよ。そう簡単には決められないわ」
左様で。
「……思うところがあるの。もう暫く考えさせて」
まあ俺は、別にいつでもいいけどさ。
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