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三人で延べ十人前は肉を貪り尽くした後、つむぎちゃんを病院まで送り、ギリギリ特急が残っていたため俺達も帰宅。
電車での復路を終え、現在リゼをマンションまで送る道中。
「つむぎちゃんの件だけど、あと何回かは制御訓練を続けた方がいいわね」
「マジか」
スキルの習熟って手間かかるのな。
ノリで片付くもんだと思ってた。
「週末は空けといてあげる。近いうち都合を聞いといて」
「了解」
リゼの場合、これまでの付き合いから鑑みるに週末は常に空いてる気もするが。
土日が来る度、暇だ構え、暇だ遊べと絡んで来るし。
「悪いな、俺の請けた依頼だってのに。支援協会への報告書には、お前の助力を念入りに書いとく」
「いいわよ別に。今回の件は『呪胎告知』の扱いに苦労して色々調べたり試したりしてた私の方が向いてたってだけだし」
成程。やけに教え方が上手かったのは、そういう理屈か。
「しかし、えらく親身じゃねぇかよ。熱心つーか」
他人のため甲斐甲斐しく骨を折るタイプではなかろうに。
「別に。アンタが優しくしてるから、私もそうしてるだけ」
「さいで」
まあ何にせよ有難いが。
「それに同情くらいするわよ。いくらなんでも可哀想」
そうかな。そうかも。
「私なら」
ポケットを弄りながら、ひとつ間を置くリゼ。
「もし私が『アラクネ』みたいなスキルを引き当てたなら、その瞬間に自分のスロットを握り潰すわ」
――化け物になった姿なんて、死んでも見られたくないもの。
殆ど独り言のように、そう小さく続けて。
リゼは欠伸混じり、ガムを噛み始めた。
余談として。此度の結果を踏まえ、無事つむぎちゃんの退院と復学の目処は立ちつつあるワケだが。
「彼女、上手く馴染めると思うか?」
「厳しいわね。あの容姿と性格じゃ、何やったって同性のやっかみは買うでしょ」
はいはい、ありそうだ。ちょっと可愛いからって生意気ーとか、男に媚びてるーとか。
どうしよう。たとえ謂れの無い支離滅裂な言い掛かりでも、つむぎちゃんが面と向かって反論する光景とか想像出来ない。
「髪と目の色でも、きっと色々言われるわね」
「スキル切っても元に戻らなかったもんな」
体毛や虹彩の変色。たまに聞くタイプの副作用だ。
なんならリゼの赤い瞳が、まさしくそれに当たる。『ナスカの絵描き』の習得に伴い、色が変わったと前に聞いた。
「つーか、そこら辺は寧ろ生徒より教師が警戒対象じゃねぇか?」
日本人は黒髪黒目以外存在しないと本気で信じてるような輩は、いつの時代も一定数居る。ネットの体験談サイトとかで散々見た。
地毛を黒に染めろって、どーゆーこっちゃ。
事実、生まれつき灰髪の俺も散々いちゃもんつけられ――てはないな、うん。
ウチの地元、基本的に無法地帯だったし。住民の大半がヤンキーか元ヤンキーかヤクザか元ヤクザだったし。
染髪どころか中学の時点でタトゥー入れてるような奴も珍しくなかった。誰が呼んだか日本の掃き溜め。
ううむ。変にガラパゴス化した特殊環境過ぎて全く参考にならねぇ。
つむぎちゃんの通う学校が、まさかあんなヤンキー漫画から飛び出したような頭の悪いビーバップであろう筈もないが……心配だ。
「復学先のスクールカースト上位連中と、少しオハナシをしとくべきか」
「やめなさいよ、そういうモンペみたいな真似」
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