137
「ちょりっすー月ちゃん! ご機嫌ドゥー?」
大学の食堂で飯を食ってたら、どこからともなく吉田が生えてきた。キノコか貴様。
だが、ちょうど良い機会。槍の件で改めて礼を言っておこう。
「この前の貰い物、有難く使わせて貰った」
「お? おー、喜んでくれたなら良かったよー!」
爪先立ちで回る吉田。
先月、死に目に遭ったとは思えんほど無駄に元気な奴だ。
コイツほど能天気なら、きっと人生楽しいことばかりに違いない。
「で、で? どの娘が気に入った系? やっぱ表紙のロシアンレディ?」
「んなもん貰った記憶はねぇ」
何の話だオイ。
食事を終え、腹ごなしに構内を歩いてるとリゼを見付けた。
しかも珍しく人と一緒。派手な身なりの遊んでそうな女が熱心に話しかけてる。
「――お願い! 辻井君も遠野君も、榊原さん呼ぶなら来てくれるって言ってるの!」
「キョーミない」
「そんなノリ悪いこと言わないで、ね!? 会費もこっちで持つから!」
「イヤ」
……どうも雰囲気的に、仲良し同士お喋りってワケじゃなさそうだが。
やがてリゼが俺に気付き、ちょいちょい手招いてきた。
犬猫か俺は。暇だし行ってやるけども。
「私を誘いたいなら、まずコイツの許可取って」
「あァ?」
なんだいきなり。
話が掴めず相手の女に視線を向けると、何故か顔を青くし早口で「ごめんなさい」だの「知らなかった」だの捲し立て、走り去ってしまった。
俺は怪異系のクリーチャーか。
「ありがと。合コンに顔出してくれって、しつこくて」
「合コン?」
コイツ誘うとか、よっぽど頭数足りてないんだな。
そんな思考を見透かされたらしく、執拗に脛を蹴られる。
謝るから止めろ。裾が汚れちまうでしょうが。
「私はモテるの」
「馬鹿も休み休み言え、女は愛嬌だぜ。愛想ゼロのダウナー系とか、どう足掻いても一部のマニア受けが関の山――」
踏むな踏むな、足を踏むな。
小指を一点集中攻撃とかタチ悪いぞ。
「……ま、確かに見てくれだけなら上物か」
軽くリゼの顎を持ち上げると、凪のような赤い瞳が俺を見返す。
整った目鼻立ち、色白な玉肌、艶やかな黒髪。
体型は『呪胎告知』と『
世の金持ち連中が挙ってスロットを欲しがるのも、この実例を見れば頷ける話だ。
……そう言えば。
「時に、お前なんで『呪胎告知』を使っても胸が減らねーんだ? 普通、真っ先に無くなると思うが」
「アレは消耗する部位を選べるの。しかも脂肪だけじゃなくて、身体の全部分。親知らずを丸ごと取り除いたり、ムダ毛を毛根ごと永久処理したり、骨を削って骨格矯正なんかも可能よ。そこまでの制御を得るには相当苦労したけど」
わあ便利。完全セルフのプチ整形ってか。
「呪詛バラ撒く特定危険スキルに歯医者やエステみたいな活用法を見出すんじゃねぇよ」
「どんなものであれ使い方次第でしょ。それに、そういう針穴穿つ扱いを心得てたからこそ『飛斬』との組み合わせも、すんなり上手く行ったんだし」
うーむ正論。返す言葉も無い。
何のために培った技術が、どういう場面で役立つかは、全く以て分からんもんだな。
「ところで月彦。話変わるけど、つむぎちゃんの所には、いつ行くの?」
「ん? あぁ、今週末だな。漸く書類が纏まりそうだとさ。お前も来るか?」
「……そうね。どうせ暇だし」
暇なら行けばいいじゃねーか。合コン。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます