115
延々と続く斬撃の嵐が吹き止み、白いワンピースを赤黒く染めた八尺様が倒れる。
同時――『処徐壊帯』を操り終えたリゼは漸く『
「ッは……は、ひゅ、かひゅっ……ひゅ、ひゅーっ……」
大鎌など放り捨て、身体を横向きに丸めて必死に呼吸するリゼ。
蒼褪めた顔色、完全なチアノーゼ状態。少しでも落ち着けるよう高濃度の酸素ボンベを口元に充てがう。
その甲斐あってか、程無く息遣いは穏やかになり始めた。
「ほら飲め、食え、どんどん口に入れろ」
呼吸が整えば、次は栄養補給。
ゼリー飲料を中心に吸収の早いものを摂らせ、
ある蜂型クリーチャーのドロップ品の蜂蜜を使った代物で、吸収効率と滋養強壮作用が凄まじく高いとか。
「……俺も手当てしねぇとな」
貧血かつ出血多量。十三階段見えるわ。
脳みそを掻き回すような痛みから察するに、かなり呪毒も回ってる。ほっといたら骨と肉の区別がつかなくなるレベルで腐りそうだ。
まずは解毒。聖水の瓶を開け、ひと口飲んで残りを傷口にかける。
次いで
一夜かけて治す
高いだけあって素晴らしい薬効。スロット持ち以外には効果が無いことが悔やまれる。
流石に失った血までは戻らないため、四肢の鈍さや倦怠感は残ってるが……帰る途中で増血薬を飲めば、どうにでもなるだろう。
栄養が循環し、多少なり体力も戻ったのか、大鎌を杖代わりに立とうとするリゼ。
けれど、やはりまだ身体が言うことを聞かないらしく、俺の助力を受けようとしてか此方に手を伸ばし――傷が癒えたばかりで血も拭き取っていない左腕を見て、そっと戻す。
「……勝ったのね。難度六のダンジョンボスに」
「えらく他人事みてぇな口ぶりだな。九割方お前の功績だぜ?」
「私は言われた通りやっただけだし」
かぶりを振るリゼだが、とんでもない。
「この勝ちは、お前が斬り飛ばした左腕ありきだ」
それが無かったら無かったで、また別の筋道を考えたが……今回はそこが起点である以上、立役者はリゼだ。
「当然、討伐ポイントも大半お前行き……チッ、こりゃ勝負は俺の負けか」
ダンジョンボスの討伐ポイントは桁ひとつ違う。最早逆転の目は無い。
コトリバコにポイントが設定されていれば、まだ分からなかったかもだが……その辺は通過のために必ず倒す必要があるフロアボスと、テリトリーが最奥ゆえ理由を外付けしなければ誰も倒そうとしないダンジョンボスとの差。
あー悔しい。頭を掻き毟る。
――身構えたのは、そんな四半秒後。
〈…………ぽ……ぽぽ……〉
ズタズタの有様となって尚、八尺様が身を起こす光景を目の端に捉えての、殆ど反射的な行動だった。
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