112
総合的に見れば向こうの方が数段上とは言え、こと近接戦の技量では俺が上回ってる。
てか、俺に技量で勝るクリーチャーとか今のところ会ったことが無い。
「ハハッハァ!」
横薙ぎと鞭モドキが衝突し、表面を激しく波打たせる水銀刀。
呑み込んだ運動エネルギーを跳ね返す反作用に合わせ、一気に振り抜き、十本以上が絡み合った鞭モドキを爆散させる。
「発破ァッ!!」
振り抜いた勢いに回転を加え、更に一撃。
無防備な左脇腹に重打を見舞うと、八尺様の表情が歪んだ。
〈ガッ……!?〉
呪詛の障壁は相変わらず健在だが、建物ひとつ倒壊させる衝撃を余さず内部に浸透させれば、完全にはダメージを殺しきれない。
銃弾を受けても意に介さなかった八尺様が、よろよろと数歩退いた。
「相当メンタルにキてるな」
軽い気持ちで人攫いに出向けば片腕を失い、あまつさえ当事者達にテリトリーまで攻め入られ、叩き潰そうと牙を剥いても凌がれる。
グチャグチャの精神状態であることは明らか。堪えようと思えば堪えられる痛みに怯んでしまっている。
まさしく好機。
「つっても……やっぱ、時間足んねぇか……!」
心臓が激しく鼓動を刻んでいるのに、体温は寧ろ下がって行く。
喉奥に溜まる吐き気、明滅を始める視界、乱れる呼吸。
どう足掻いても、あと二十秒あるか無いかで俺は失速する。
故に。
「今だリゼ、やれえぇぇぇぇええっ!!」
今日のところは、相方に旨い部分を食わせてやろう。
「――――ああぁぁぁぁああぁぁっっ!!」
獣じみた咆哮。
脈打ち、膨れ上がった大鎌より放たれる無差別破壊の一大呪詛『呪胎告知』。
それを『飛斬』で以て太刀筋ひとつに圧し固めた『
その最大出力。ここくらいの階層なら両断しちまう必殺技――『
アイツのネーミングは、いちいち俺のセンスを刺激する。
「避けれるもんなら避けてみろ、防げるもんなら防いでみろ」
〈ぽぽ――アグッ!?〉
置き土産に脚への振り下ろしを染み込ませ、バックステップで離脱。
急激に俺の戦闘能力が増したことでリゼに拘う暇の無かった八尺様には、鞭モドキ全てを引っ込めた最大防御態勢で受け止めるしか打てる手が無い。
――尤も、結果的には無用だったが。
「あ」
「しまっ……」
文字通りの全力全開。ゆえにこそ制御の難しい『処徐壊帯』。霧と薄闇で視界も悪い。
当たれば竜の鱗も斬り裂くだろう強大無比なる飛ぶ斬撃は──けれど僅かに、八尺様を逸れてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます