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スキルの中には、発動時に能力の段階引き上げが可能なタイプのものが稀にある。
そういう効果を『深化』と呼び、段階は『深度』として分けられる。
俺の『双血』はまさしくそれにあたり、深度を上げれば擦り減る血の量が大きく増す代わり、強化倍率も跳ね上がる。
凌がれれば敗北必至。実戦でおいそれと使うのは無駄にリスクがデカ過ぎる上、そもそも今日に至るまで使う必要性すら感じなかったため、遮二無二使わされるような敵の出現を待ち望んでたワケだが。
「まさか、こんな披露目になるとはな」
世界が遅い。一秒が十秒ほどに感じる。
踏み込む。石畳を割り砕いて勢いが死なぬよう、加減と体重移動に気を遣いながら。
三十歩分は距離が開いていたコトリバコを眼前に据え、水銀刀を抜き、上段に構える。
左手は使わない。この状態で両手フルスイングなど、剣が保たん。
攻撃準備を終えたと同時、ようやっと始まる迎撃。
呪詛を放出すべく、厳重に封じられた蓋を開いて行くコトリバコ。
が。
「遅せぇ。何もかも」
柄が軋むほど握り締め――振り下ろす。
「発破ァァァァアアアアアアアアッッ!!」
切っ尖の動きに数拍遅れて鳴り響く風切り音。
風圧と衝撃で周囲の全てが吹き飛ぶ。直撃を受けたコトリバコに至っては、破片も残さず爆散した。
手中でガタガタと震える、刀身が激しく波打つ水銀刀。
呑み込みきれなかった、跳ね返しきれなかった運動エネルギーが、流動する特殊金属の内側で暴れ狂っている証左。
「…………ふう」
ひとつ息を吐き『豪血』解除。
立ち眩みを起こしフラつきかけるも、奥歯を噛み締めて耐える。
「ま、こんなもんだ。どうよ? これなら、難度六のダンジョンボスとだろうと張り合え――」
〈ぽぽ〉
〈ぽぽぽぽぽぽぽ〉
〈ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽっ〉
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