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「空間転移のスキル持ってる奴とか居ねーかな。是非迎え入れたい」

「居たところでフリーの筈ないでしょ。日本中どころか世界中で引く手数多よ」

「なら回復系。パーッて光った瞬間、削れた血が元通り的な」

「知ってる? そういうスキル持ってると、国によっては医師免許貰えたりするのよ」


 葉酸補給用のサプリを十粒ほど纏めて噛み砕き、トマトジュースで流し込む。


「……ねぇ。ホントに八尺様と戦う気?」

「たりめーだろ。なんだ藪から棒に」


 周りが拓けた田跡に陣取り、クリーチャーへの警戒を行いつつの休憩中。

 膝を抱えたリゼが、珍しく弱気な態度で俺を見た。


「三ヶ月前アンタにナンパされて、最初はビギナーに簡単な実地案内するくらいの気持ちで一緒にダンジョンに潜って」


 ナンパした記憶はねぇ。


「そしたらアンタがとんだバケモノで、気も合いそうだったしパーティ組んで、そこから一足飛びに到達階層を伸ばしたワケだけど」


 一度、口舌が途切れる。


「……確かに『飛斬』のお陰で私は数倍強くなったし、アンタに至ってはここまで一度も、話だけ聞いたすら切ってない。でも……でも五十階層のダンジョンボスなんて……まだ無理よ……」


 霊感、第六感と呼ぶべき感覚の鋭敏なリゼは、四日前に相対した八尺様の力量を、俺とは異なる視点で推し測った。

 その結果、手に余る、明らかな格上と見做したのだろう。


 …………。

 コイツまで付き合わせる必要は無いか。


「怖けりゃ帰れ」

「え……」


 なんだ、その捨てられた仔犬みたいな目は。

 やめろよ罪悪感湧くだろ。


「言っとくが俺は自分より強い奴が相手の方が燃えるタイプだ。それに勝てるかどうかは戦いながら考えるこった。否定から入るのは負け犬の専売特許だぜ」


 他のベテランに任せるべきとか、実力を付けて再挑戦すべきとか、小賢しい安全牌など糞食らえ。

 こと探索者シーカー活動に於いて、俺は何ひとつ自分の本心を偽る気は無い。


「ま、お前は甲斐甲斐しく俺の帰りを待ってやがれ。そうなると当然、勝負は俺の勝ちだがな」


 よし休憩終了。ダンジョンアタック再開。

 リゼはと言えば……多少ふてぶてしさを取り戻した様子で、溜息混じり立ち上がった。


「……帰らないわよ。アンタほっといたら、今日にでも死んじゃいそうだし」

「今やりたいこと全部やり切ったなら、そいつも悪くねぇ」


 脛を蹴られた。


「何しやがる」

「ばーか」





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