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 さも気乗りしない、みたいな空気こそ漂わせたものの、難度六のダンジョンで活動する探索者シーカー達の業前を文字通り肌で知れるこの余興、中々どうして悪くない。


 尤も、一線級と呼ばれるような大ベテラン連中は、実際の数字以上に危険性と収入が跳ね上がる難度七以上を挙って攻めるため、見た感じ明らかな格上は一人も居ねぇが……手持ちのスキル次第では分からない。

 三下相手じゃ『鉄血』を鍛えるもクソも無いからな。強い奴ほどバネのある踏み台になってくれる。期待させて貰うぜ。






「ンン〜。え、俺が一番でいいの? いやいや、そんなん俺だけで終わっちゃうでしょ! 可哀想じゃん流石に!」


 なんだコイツ。

 えらくチャラいのがトップバッターだな。こういうタイプは吉田一人で十分なんだが。


「まずは名乗れ」

「え、キミ俺を知らないの? 九州ナンバーワンの俺を?」


 ほうナンバーワン。

 自称の称号なぞ大抵アテにならんが、攻略難度アベレージが低い九州なら、軍艦島の最深部を攻めてるような奴であれば頂点を嘯いても満更フカシにはなるまい。

 九州最難関ダンジョンと言えば、まさしく此処なワケだし。


「俺、惑星裂ほしざきショウ。九州ナンバーワンホストの凄腕探索者シーカー、これ名刺ね」


 ナンバーワンってホストかよ。ナンバーワン探索者シーカー連れて来い。

 名刺なんか渡されても店には行かねぇぞ。


「ところでホントに俺が最初でいいの? 俺、マジ喧嘩最強伝説とか作っちゃってるよ?」


 お前みたいなこと言う奴、地元に五十人くらい居たわ。多過ぎだよ、一体何を指して最強なのか。

 もれなく全員、蹴散らしたが。


「ねーキミ! このままだとカレシくんボコられちゃうよー? 止めなくていいのー?」

「もしもし、ピザの宅配お願いします」


 リゼの奴、聞いてすらいねぇ。トレーニングルームにピザを運ばせるな。

 つか、はよかかってこいや。






「なんだったんだアイツ」


 自称九州ナンバーワンホストは、腰に吊るした得物も取らず、やけに大振りなテレフォンパンチで『鉄血』状態の俺を殴ったかと思えば、拳の骨が砕けて病院へ運ばれて行った。


 奴のことは忘れよう。きっと場を盛り上げるため、リゼが雇ったパフォーマーだ。


「次」

「よろしく頼むでごわす!」


 なんだコイツ第二弾。

 西郷隆盛のバッタモンみたいなのが出て来やがった。犬まで連れてるし。ここペット入場禁止だぞ。


「おいどん、東郷特盛とうごうとくもりでごわす! わっしょい!」


 ハンドルネームと信じたい。鹿児島県民バカにしてんのか。

 あと東郷はやめろ。藤堂おれと発音が似てるから。


「どすこーい!」

「鉄血」


 開幕一番、腰の入った顔面張り手。

 何らかのスキルが働いてるのか、同じ素手でもナンバーワンホストと違って中々の一撃だが……言わせて欲しい。

 西郷隆盛は相撲取りじゃねぇよ。






「拙者、相良忍軍の末裔――」


 SFと時代劇の要素を見事にミックスした装備のニンジャ=サン。

 カッコいいけど目立ち過ぎ。


「キャハハハハッ! キャハハハハハッッ!!」


 耳障りな声で高笑うばかりの、ほぼ会話が成立しない、ピエロみたいな格好の女。

 よく順番待ち出来たなオイ。


「貴様も我が水鳥みずどり拳の餌食となるがいい……」


 世紀末に居そうな、変わった拳法を操る長髪の精悍な男。

 技より名付けのセンスを磨け。


「この勝負、俺の魂を賭けるぜ」


 凄まじいラッシュの使い手だった、古式ゆかしい学ラン姿の青年。

 魂なんて賭けられても困るんですけど。


 …………。

 途中で増血薬による回復を挟み、合計二十人ばかり相手にしたが……九州の探索者シーカーってアク強過ぎじゃね?


 あ。でもニンジャの方は、ちょっと詳しく話を聞かせて頂きたい。





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