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「ふーっ……」
薄気味悪い笑顔で階層内を徘徊する、巨大な顔面だけのクリーチャーを仕留めた俺。
断末魔、死ぬほど痛そうだったな。前歯全部ブチ砕いたし。
「誘引剤の分は、コイツで最後か」
永遠に工事が始まることは無いだろうビル建設予定地でクリーチャーを呼び寄せ、狩り続けた三十分。
仄かな燐光を帯びていたタブレットの欠片が空気に溶け、効力が消えたことを示す。
「ざっと八十。挽回には十分だろ」
闇夜の更地にバラ撒かれた、平均してゴルフボール大の魔石群。
これ全部拾わなきゃならんとか、めんどくさ。
「っしゃあ俺の時代到来! てめぇの跳梁もここまでだ!」
横並ぶ空間投影ディスプレイ、表示された互いの討伐ポイント。
二十一階層から二十七階層までは只管に凌がれ続け、けれど二十八階層で引き分けとなり、この二十九階層でとうとう上回った我が数値。
未だ累計値で劣ってるのは、ひとまず目を瞑ろう。今はただ、反逆の火蓋となる第一歩に酔い痴れるのみ。
「予告する! あと一度きりの勝利も許さず、二次関数グラフの如き逆転を遂げると! 二十七階層が貴様にとっての絶頂だったと知れ!」
「ふーん」
なんて腹の立つ女だ。少しは悔しがれ。
「ねえ月彦。楽しい?」
「ああ楽しいね! どーゆー意味だ、この野郎!?」
コイツ、にまにましやがって。
一体何が面白いんだ。言ってみろや。
「それで? どうするの?」
増血薬で消耗を回復させた後、大鎌を弄びながらリゼが尋ねて来る。
何がと聞き返すまでも無く、更に言えば、そもそも問われるまでも無い。
「行くに決まってんだろ」
三十階層に下りるか否か。三十階層フロアボスに挑むか否か。
ああ。本当に、問われるまでも無い。
「どうせ次のアタックは三十一階層まで進むんだ。なら、その時に余力を作れるよう今この場で相手を知っとくのは悪い話じゃない」
「単にフロアボスと
「もち」
同じクリーチャーと二度、或いは三度も戦えば、大体の攻略法は分かってしまう。
正直リゼとの勝負に夢中でなかったら、この夜街エリアは既に飽きていたに違いない。
とどのつまり、早く拝みたいのだ。新しい敵を。
そして――待ち焦がれているのだ。俺が形振り構わず全力を発揮するに能う、桁外れな怪物の登場を。
「んじゃ、いざ参ろうぜ相棒」
「りょ」
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