78
「なんてこった」
三日間に及ぶ万全のリフレッシュを挟んだ上で、二度目の軍艦島アタックを終えた俺達。
結果は……またしても俺の敗北。しかも前回より更に差は広がってる。
「クソッ! 二十五階層で『ひとりかくれんぼ』に引っかかったのがロスになったか!」
「ああ、アレ。私も出くわしたけど……わざわざ付き合ったの? アンタなら正規の手順踏まなくてもフツーに倒せたでしょ」
初戦で横紙破りは野暮かと思って。
次からは容赦無く踏み潰す。
「藤堂様、魔石の査定が終了致しました。全部で四十八万六千円になります」
「ついでにガッデム」
軍艦島二十番台階層の平均魔石買取額は、四千円から五千円ほど。
各階層で一時間のうち三十から五十はクリーチャーを仕留めてるもんで、否が応にも稼ぎは増える。
「嘘だろ、二度の日帰りアタックで既に百万円。しかも
所得税とか無いんだよ、一円も。知る限り消費税くらいだ、普通に払ってるの。
あと銀行の融資なんかも、新人
まあ、当然と言えば当然。
日本の現在人口は約一億八千万人。割合的に、スロット持ちは九万人前後の計算。
とどのつまり、今や文明社会の根幹となっている魔石を筆頭、あらゆる技術の支柱を担うダンジョン資源を卸せる人材は、国内に僅か九万人しか居ない。延いて、その中で実際に
そりゃ優遇する。スロット持ちの一人でも多くに
脳の血管を詰まらせたような輩が時々でかい声で文句を言うが、
それに
わざわざ不興を買ってまで、搾り取る対象に
「金よりも討伐ポイントが欲しい」
支援協会のロビーで頭を掻き毟り、どうにかリゼを出し抜く方法を考える。
ちなみにリゼは、すぐ隣に座ってる。スマホ弄りながら俺の肩を背もたれにするな。
「ねえ月彦。私、明日あそこ行きたい。佐世保のオランダみたいなとこ」
「テンボスか」
テーマパークはいいよな。人間の方から勝手に集まってくれる。
俺もクリーチャーを引き寄せるスキルとかあれば、歩くテーマパークになれるのにな。
「……誘引……そうか、その手があった!」
「きゃっ」
勢い良く立ち上がる。必然、背もたれを失ったリゼがベンチソファに横たわる。
恨みがましい目で睨まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます