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 高いパフォーマンスを発揮するにはコンディション調整が肝要。アタックを終えた後の疲労抜きを怠るような奴は一人前の探索者シーカーとは呼べない。


 蹴散らすだけの十番台階層ならまだしも、魔法などというワケの分からんものを使ってくる二十番台階層のクリーチャー相手だと、流石にスキル無しはキツい。

 そして消耗が激しい『双血』を多用する以上、自己メンテは不可欠なのだ。






「ビーチで日光浴……あっつい」

「だろうな」


 海に行きたいと言い始めたリゼに付き合い、海水浴場へ。

 長崎市の海水浴場と言えば高浜だろう。少なくとも俺は他に知らん。


「月彦、パラソル借りてきて」

「今忙しい」


 あちこちファスナーが付いた黒のビキニという妙に挑発的な格好でビーチチェアに寝そべり、肌を焼くリゼ。

 いや焼いてないか。さっき俺が日焼け止め塗らされたし、そもそも『消穢』で紫外線とか完全カットだし。


「それにしても、想像通り混んでたな」


 流石は名所。まさしく芋の子を洗うが如し。

 何故か俺達の半径五メートル以内には誰も居ないが。


「パラソルー」


 煩い女だ。

 分かったから少し待ってろ。






 海の家で借りたパラソルを担いで戻ると、リゼに話しかける軽薄そうな男が二人。

 が、近寄る俺を見た途端、一目散に逃げた。なんなんだ一体。


「今の奴等は?」

「さあ。何か言ってたけど聞いてなかったし」


 人の話は聞けよ。どうせつまらんナンパの類だろうけども。


 リゼの側にパラソルを突き刺す。そして制作途中だった作品に再度取り掛かる。


「誰も近寄らんお陰で、でかいのが作れそうだ」

「そりゃアンタの隣に座るくらいなら全身刺青の隣の方がまだマシでしょ」


 心外極まる。


「ガタイ良過ぎなのよ」

「無駄に筋肉膨らませたみたいに言うな」


 実用的な、アスリートやボクサー系を突き詰める形で鍛え上げた。

 見せること自体が目的なボディビルダーとは肉質が違う。


「傷痕もヤバいし」

「若気の至りだ」


 角材とか釘バットとか、小中高時代の相手連中に色々使われたし。

 効率良く怪我を治すため食生活に気を遣い始めたのが、栄養学を修める切っ掛けだったな。


「…………」


 無言で撮るなオイ。またSNSに上げる気か。

 やめろ、あんなもの。いつか知らない間に保証人にされちまうぞ。






「月彦、日差しで火照ったから泳ぎたい。シャチの浮き輪、借りて来て」

「だから今忙しい」


 もう少しなんだ、出来上がるまで待ってろ。


「……ところでアンタ、何作ってんの?」

「サグラダ・ファミリア」


 一昨年、バルセロナで完成パレードやってたよな。

 かの有名な受難のファサード内にダンジョンゲートが現れたことで、本来の竣工予定を四十年近くオーバーしたと聞く。

 マジ受難。





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