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 この夏の遠征先――『軍艦島』を管轄とする探索者支援協会端島支部は、端島と謡いつつも所在地は九州本土、長崎港の近くだ。

 とは言え仕方ない。端島は完全な無人島、加えて世界遺産。ダンジョンゲート出現は人間の作為を超越した現象ゆえ不可抗力にしても、迂闊に支部を建てて景観を崩すワケには行かん上、そも職員を常駐させるのは難しい環境。


 でも、それならそれで素直に長崎支部で構わんと思う。

 長崎のダンジョンは軍艦島だけなワケだし。






「栄えてるな……つかここ、ホントに支援協会か?」


 元々、事象革命以前は観光ツアーが組まれるような名所だったからか、一般人の出入りも多いらしい端島支部。

 ショッピングモール級の規模を誇る建物内は、ダンジョン絡みの土産物屋や食材系のドロップ品を使った料理が食べられるレストランなど多くのテナントが入り、賑わってた。


「あ、コカトリスエッグのクレープ食べたい」

「お前ホテルで大量に朝飯食ってなかったか?」

「甘い物は別腹」

「半分以上、甘いもんばっか食ってたろ……」


 しかも一個三千円。普通の三倍四倍しやがる。

 食材系はドロップ率高めと聞いちゃいるが、やはり一般的な畜産ほどの供給は望めないんだろう。


「甲府迷宮には食えるものを落とすクリーチャー自体、殆ど居ないしな……樹海エリアの『アップル樹人トレント』くらいか? でもアイツがドロップするリンゴ、酸っぱくて不味いんだよな」

「月彦、これ凄く美味しいわ。生地がクリームと一緒に蕩けるようなまろやかさ」

「ひと口くれ」


 と言うか、ダンジョンアタック用の受付窓口はどこだ。






 案内板で確認したところ、探索者シーカー向けの施設は三階に集中していた模様。

 実際エスカレーターを上がると、一気に雰囲気が変わった。


「こっちも流石に人が多い」


 甲府迷宮は知る人ぞ知る穴場だったため、あまり大勢の探索者シーカーが一堂に会することは無かった。

 しかし長崎市は人口自体多いし、擁するダンジョンも割と有名どころ。

 様々な装備に身を包んだ者達が優に百人近く、広いロビーに集まっていた。


「全員、軍艦島行きの定期船待ちか? 混みそうだな」

「一本見送る?」


 ダンジョンには昼も夜も無い。見送ったところで、あまり意味があるとは思えない。

 しかも長崎港と端島を往復する連絡船の数は一日三本。八時間も余計に待つのは流石に勘弁。


「いいさ。出先の人混みに悪態つくのも旅行の醍醐味だろ、予定通り向かおうぜ。窓口で申請したら、着替えてまたロビーに集合な」

「りょ」





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