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一度習得したスキルをスロットから引き剥がすことは、現在の技術では基本的に不可能だ。
だが『ウルドの愛人』なら、習得より間も無い異能であれば、差し替えは容易い。
──とは言え俺には、そんな真似を仕出かす気など毛頭なかった。
同じクリーチャーを倒し続ければ、いつかは突き当たるコンティニュー制限無しのドロップ品とはワケが違う。
スキル習得は人生に於いてスロットの数しか存在しない限られたチャンス。
その結果が吉と出ようが凶と転ぼうが甘んじて受けるべき。少なくとも俺にとっては、安易な差し替えなどで軽んじていい話ではない。
故に。いくらリゼの頼みだろうと、スキルに関しては一切手出し、もとい過去出し無用の心積もりだった。
それが、普通に頼まれただけであったならば。
「面白れぇ。勝負事は大好物だ、受けて立つぜ」
つい先程、リゼからの挑戦状に対し、そんな返答を手向けた俺。
詳しい勝負の内容は後日に取り決める運びとし、今は何をやっているかと言えば……二人で飯を食ってた。
「知ってるかリゼ。九尾の狐が出るダンジョンって京都じゃないんだぜ」
「は? 嘘でしょ、ずっと京都だと思ってた」
「栃木なんだこれが。ほらここ『
未だ決まらぬ遠征先を吟味する傍ら、あちこちのダンジョンに纏わる豆知識など調べてみたり、逆に披露してみたり。
ちなみに那須殺生石異界は日本唯一の難度十、全百階層の最難関ダンジョンだ。
そして、あのレジェンド
「静岡のダンジョンやべーな。固有の
「血みどろ系は嫌よ、鉄臭い。肝試しは夏の風物詩だけど、折角なら風情が欲しいわ」
風情となると、やはり軍艦島か。都市伝説をなぞらえたクリーチャーが多いらしいし。
「マジ、どこにすっかなぁ」
宿の予約も必要になる。ボチボチ決めねぇと。
「……楽しみね。勝負」
「ああ。楽しみだな」
あ、追加の料理来た。
いや、ポンドステーキもトリプルマウンテン盛ナポリタンも、頼んだのそっちの女です。
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