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「どうだ。新しいスキルの具合は」
カロリー補給の後、九階層内で一番広かったエントランスに移り『飛斬』の試運転。
返答代わり、寸断されて降り注ぐシャンデリアの残骸。
良さそうだな。
「『ロープアクション』と『サンダーランス』もアタリの部類だったが、総合的にはコレが正解か」
「ええ。しかもこれ、多分――」
実際に使ってみた感じから、ある推論を立てたリゼ。
その面白そうな話を聞いた俺は、ひとつ提案した。
「しかし、さっき撃ったばっかだろ」
「あと一発なら大丈夫」
「……なら、帰る前に試してみようぜ。ちょうど手頃な巻藁も下に居ることだしな」
ダンジョン最奥に坐すフロアボス、通称ダンジョンボス。
フロアボス以上に同階層帯の水準とは乖離した強さを持つ怪物であり、リポップタイムこそ通常のフロアボスと比べて大きく間を空けるものの、やはり魔石もドロップ品も残さぬ厄介者。
が、放置し続ければダンジョンが活性化し、全域の危険度を底上げする原因となるため、定期的な排除を促すべく特別手当と高い討伐ポイントが設定されている。
Dランキング入りを目論む
リゼがサクッと倒しちまったけど。
「所詮は難度一。強さ的にはリャンメンウルフ以下か」
流石にベヒ☆モスよりは上だったが。
「駄目だな。新技を試すにゃ役者不足も甚だしい」
洋館エリアの終点を飾る、ダンスホールのような構造の十階層。
「……『呪胎告知』を『飛斬』に篭めて放つ。あの無差別破壊を斬撃一本に圧し固めると、こうなっちまうのか」
直径数百メートル程度とは言え、階層ひとつ丸ごと真っ二つに斬り分けてしまった。
「ズルいぞ。こんなイカした必殺技を手に入れるとか」
「かひゅっ……は、はぁ、かふっ……」
と、軽口を叩いてる場合ではない。
短時間に続けて『呪胎告知』を使った反動。ハンガーノックで座っていることすら出来ず、蹲ったリゼ。
「やっぱ無理があったか。あと一発なら大丈夫なんてフカシやがって」
リゼの圧縮鞄からゼリー飲料をあるだけ引っ張り出し、次々飲ませる。
喋れる程度に回復するまで、七本空となった。
「俺相手に見栄を張るなよ馬鹿」
「……アンタ以外の誰に、見栄を張れってのよ……」
なんじゃそりゃ。
まあいい。
「立てそうか?」
「手足に力入んない……上まで運んでって……」
「りょーかい、お姫様」
手早くカロリーが補給出来るチョコバーをリゼの口に突っ込み、姫抱きとする。
さっさと帰って、職員さんに肉が美味い店でも教えて貰おう。
……ところで、今の光景もリアルタイムで見聞きされてるんだよな?
恐ろしい世の中になったもんだ。いつか国民全員にナノマシンが導入された徹底管理社会の道を進んだらと思うと、ぞっとしねぇわ。
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