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約一名ほぼインチキによるものだが、兎にも角にも夏休み前の関門であるところの定期試験を終えた俺とリゼ。
今日は暫く御無沙汰だったダンジョンアタック。軽い運動も兼ね、見晴らしの良い甲府迷宮十二階層あたりをブラつくことに。
まるでピクニックだな。
「遠征先、どこにするよ」
「難度は五か六くらいが塩梅じゃない? あと、どうせなら海の近くがいいわ」
話しながら、屈んだ俺の背中を踏み台代わりに跳んだリゼが、カンガルーのようなクリーチャーの頭上を取り、首を狩る。
次いで大鎌と水銀刀をタイミング良く打ち合わせることで更に高く宙を舞い、コンドルに似たクリーチャーを蹴り落とす。
そいつに俺がバッタースイングでトドメを刺した後、水銀刀を傍に突き立て、落ちて来るリゼを受け止めた。
「お帰り」
「ただいま」
腕輪型端末の空間投影ディスプレイを開き、日本のダンジョン分布を表示させる。
この国のダンジョン総数は九十六。
全世界、九百九十九のうち一割近くが小さな島国に密集したダンジョン大国。
必然、遠征に於ける選択肢も多い。
「海の近く、島とか海岸沿い……お、端島なんかどうだ? ダンジョン名『
「悪くないわね。九州本土との往復も時間かからない距離だし、最寄りの港は観光スポットの多い長崎市。何回かに分けてアタックするなら、インターバル中のことも考えとくべきよね」
「あぁ、そうか。遊べるとこにも困らん場所を選ばないとな。折角の出先で二日も暇を持て余すのは勿体ねぇ」
リゼの左手を掴み、右から左へ一八〇度振り回す。
空いた右手で先端部を握っていた大鎌が生んだ遠心力による広範囲の斬撃は、一見、何も無かった場所に血飛沫を上げた。
景色に合わせて己の色を変えることで隠れ潜み、見晴らしの良さを過信し警戒を怠った
十階層フロアボスのベヒ☆モス討伐によりビギナーを卒業し、調子に乗った自称中級者は、大抵コイツに痛い目を見せられるとか。
「ちょいと目を凝らせば分かるんだが」
繰り返し『双血』を使い続けたことで素の身体能力も底上げされたのか、この程度のクリーチャー相手なら既に『豪血』は必要無い。
この短期間で明確な差異が出るとか、上がり幅が妙に大きい気もするが、文字通り血を削っての、本来の限界値を超えた運動。普通に体を動かすより効果的なのだろう。
「三陸方面はどうだ。幾つかダンジョン回ってよ。あっちは美味いものも多いぜ」
「東北って夏でも泳ぐには寒くない? ビーチでバカンスしたいのよ私」
「成程」
エントリーモデルの防具程度なら紙のように貫く角を持ったウサギのクリーチャーが突進して来たため、自慢の角を掴んでリゼの方へと投げる。
大鎌の振り下ろし。中型犬ほどの体躯は綺麗に正中線をなぞる形で真っ二つとなった。
――いやはや、しかし。
「連携縛りの戦闘も中々面白いな」
「アンタが
上手く行く分には良いだろ、別に。
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