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適当な一室に入って鍵をかけ、
古城エリア内のオーソドックスな野営スタイルだとか。屋内、しかもベッドのある部屋を選んでおいて野営とは、これ如何に。
「ダンジョンでの寝泊まり前提な二十番台階層のアタマに野営しやすいエリアが待ってる点も、中堅方の密かな人気を呼ぶ一助なんだろうな」
「山梨だと攻略難度八の『
要は自分だけのお気に入り的なノリか。
分かる分かる。
「ねえ。いい加減に教えてくれてもいいんじゃない?」
曲がりなりにも野営中ゆえ装備を脱ぎ散らかすワケには行かないため、ブーツを履いたままベッドに寝転がって寛ぐリゼが、おもむろにそう言った。
「史学科の試験問題のヤマとか俺が知るかよ」
「そんなもん誰が聞いたのよ。確かに少しヤバいけど」
嫌なこと思い出させないで、と愚痴りつつ、リゼは俺が広げていた荷物に視線を向ける。
フルプレート一式どころか、剣と盾に至るまで完全に出揃ったドロップ品の山に。
「リビングアーマーから落ちる鎧のパーツは、かなり小分けになってるわ」
「ああ、ケチだよな」
頭に被る
流石に細かく分け過ぎだ。しかも左右ある場合は片方ずつだし。
週刊『鎧を作ろう』かよ。コンプ前に心が折れるわ。
「ドロップ率も三十から五十にひとつ。後半になるほどダブりの可能性も上がる。普通ならコンプ前に心が折れるわね」
「だよな」
それを俺は、倒した全てのリビングアーマーから一度のダブりも無くドロップを重ね、あっさり揃えた。
確率的にどれぐらいだろうか。コンマの下に夥しい数のゼロが並びそうだ。
「運が良かった」
「それで済む話だと思ってんの?」
ジト目で睨むなよ。ほんの冗談だ。
「……答え合わせの前に、お前の予想を聞きたいね」
リゼは俺のスロット数が二つだと知ってるし、その片方が『双血』であることも知ってる。
然らば今日、随所で見せた不可思議の全てが単体スキルによる恩恵という前提を踏まえた上で推理しなければならない。
名探偵の考察や如何に。
「ドロップ率の操作か、若しくは運そのものを底上げしてるか……どちらにせよ激レアスキルね。でも、それだと十三階層で毒を受けてた
「ああ、実際大ハズレだ。常識に囚われ過ぎだぜ」
俺はドロップ率の操作など出来ないし、作為的な幸運を働かせてるワケでもない。
否。考え方次第によってはドロップ率を操作してるし、幸運を引き寄せてると言えなくもないが……やはり俺のスキルの根幹ではない。
「……そうだな、うん。なあリゼ、教える代わりにひとつ頼まれてくれるか?」
「?」
俺が習得したのは新種。まだ名前すら無い未発見のスキルだ。
しかし良い感じのネーミングが浮かばなかったため、まだ協会に申請を出していない。
なので。
「スキル名、決まってねぇんだ。お前が考えてくれ」
「は? まあ別にいいけど」
「なら教えて進ぜよう。ほれ耳貸せ」
他に誰が居るワケでもないが、なんとなく内密の話を装ってみる。
素直に近付いて来たリゼの耳元に口を寄せ、俺は十七階層でドロップしたランダムスキルペーパーによって得た異能の詳細を、包み隠さず話した。
「――てな次第だ。どうよ、面白いだろ?」
「……………………は、ぁ?」
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