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「この王道を往くデザイン。やや古びた感じも、遍歴の騎士ってテイストで大変良き」
リビングアーマーがドロップした剣を掲げ、月光に翳す。
エッジを這う昏い赤。妖艶だ、堪らん。
「ミドルクラスくらいの性能はあるわよ。元の使い手が完全な人型だから規格も合ってるし」
「マジか。まあ俺には銀様がおられるので武器は間に合ってんだが」
浮気したらジャンクにされちゃう。
「とは言え、何やらありもしなかった筈のコレクター魂が疼く。こうなったら盾と鎧も欲しい」
「一部ずつドロップするわね。落とす確率とかダブりの可能性とか考えたら、全部揃えるのは相当ホネだけど」
「ハッ。アイツ等、鎧の下はカラッポだろ。骨なんぞありゃしねぇよ」
冷たい目で見られた。
今のは寒いギャグ飛ばした俺が悪い。
「リビングアーマーいねがぁ」
秋田県所在のダンジョン『
全八十階層、攻略難度九。凶暴な鬼系クリーチャーが犇めく日本屈指の難所。
そんな危険地帯の七十階層フロアボスを務めるバケモノの口癖を真似しつつ、古城内を練り歩く。
すると、バレーボール大の火炎弾が結構な速度で飛んで来た。
「鉄血」
避けても良かったが、なんとなく掌で受け止めてみる。
燃え盛る炎塊の直撃。しかしダメージは無い。握り潰し、四散させる。
硬化した身体は『鉄血』の字面通り金気を得るため、耐熱耐冷の面でも優れるのだ。
リゼの『消穢』と違い、衣服にまでは効果が反映されないけれど。
「熱くないの?」
「一番風呂ぐらいには熱い」
「分かり易いような、分かり辛いような……」
いいんだよ小難しい能書きは。
で。何処のどいつだ、不躾に花火なんぞ向けやがった火遊び上手なイタリア野郎は。
〈フフッ〉
「あァ?」
耳朶を撫ぜる、透き通った音色の含み笑い。
鼻孔を擽る、甘ったるい芳香。
〈フフ、フフフフッ〉
月光を浴びた柱の根元より静かに伸びる影が、ぐにゃりと歪んだ。
絨毯から剥がれ、陽炎の如く昇り立ち、やがて形を整えて行く。
「……コイツ。二十一階層で目撃情報あったかしら」
唖然と怪訝を含んだ、油断無く大鎌を構えつつのリゼの呟き。
それにほんの少しだけ遅れて、虚像たる影は完全な実体を得た。
クリーチャーは、外見的、能力的、性質的な共通点を基準に大まかな種別が為される。
そしてその中でも、多くが手探りだったダンジョン黎明期から、様々な情報やノウハウが蓄積された今日に至るまで、一切変わらず半数近い
亜人タイプの派生系。そいつ等の主な特徴は、細々したパーツの違いこそあれ、限り無く人間に程近い外観。
重ねて、半数近い
とどのつまり――女性型クリーチャーだ。
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