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戦端を開き、早数分。
状況は一進一退だった。
「火柱ァッ!」
まず開幕の奇襲でジャケットを燃やされた火柱。
直径は両腕を広げた程度、高さはビル三階相当。見える範囲ならどこでも座標指定出来る遠距離用。火の粉が飛び散るため、紙一重での回避は危険。
「槍ッ!」
次に、小さな竜巻を細く固めて放つ風槍。
速度と貫通力に優れた中距離用。大人三人重ねたくらいの厚みを持つ岩に、拳大のトンネルが一瞬で開通する。
「氷弾っ!」
最後に、パチンコ玉ほどの氷をショットガンのように飛ばす氷弾。
射程範囲が広い近距離用。発動までのタイムラグが一番少ない。
いずれも特色が異なるため、シチュエーションに応じて使い分けられれば厄介。
そして
「手強い手強い」
とは言え逆に考えれば、適した状況で使って来る魔法は毎回同じ。
個々の対処法も、大体把握した。
火柱は発動の際に溜めがあり、加えて発火の寸前で先んじて足元が熱くなる。
俺の反射神経と瞬発力なら、それを察知してからでも避けられる。
風槍は有効射程二十メートル足らず、複数同時発動不可。ホーミング性能も無く直線的。
発動時の大きく杖を突き出すモーションで、正確に弾道が読める。
氷弾に至っては半ば牽制用。至近距離でなら実際の散弾と同等の威力とストッピングパワーを持つが、少し離れれば『鉄血』を使わずとも耐えられる程度に落ちる。
術者自身に近接戦闘の心得があるため、それで充分なのだろう。
実際、一度氷弾を受けて動きが止まったところに、連打を食らいかけた。
「身体能力は素の俺と『豪血』を使った俺の中間。技量は……こっちが上だが、決定打になるほどの差じゃない」
完全な近接戦に持ち込めれば此方に分がある。
あと一度、水銀刀で強めに打ち込めば砕けるだろう。初撃を防いだ時、小さくヒビ入ってたし。
が、そこは向こうとて百も承知の筈。現に俺とのインファイトを徹底的に避けてる。
つれない野郎だ、遊び心が足りてねぇ。
「どうしたもんか」
こっちには、奴を無理やり間合いに引き摺り込む手段が無い。
ならばこその膠着状態。悲しい。
「多分もう少しなんだよなぁ……」
早いところ、この千日手じみた流れを崩さなければ、まずいことになる。
そうなる前に──ベストを保てている内に、真っ向勝負と洒落込みたいのだ。
「うぇ……また頭クラクラしてきた……」
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