37
現在十九階層。
それも、フロアボスが待つ二十階層に通じる階段の手前。つか目の前。
「月彦。アンタ
「三週間」
「ダンジョン滞在時間は?」
「百五十時間ちょい」
腕輪型端末のユーザー情報欄を開き、確認。
こんなもんか。大学あるし、一回アタック終えたら二日の休息期間を挟まなきゃならん規則だしで、まあ奮わん。
さっさと夏休みに入って欲しいぜ。甲府迷宮以外のダンジョンも攻めてみたいし。
「お前は?」
「二千時間ちょっと。最初の頃は、あっちこっちのパーティに臨時で混ざって立ち回り方を覚えたり、一桁台階層でチマチマ稼いだり……」
曰く、初めてベヒ☆モスを倒せたのはダンジョン滞在三百時間超、デビューより五ヶ月を回った頃だと。
実は今のように十番台階層でのソロ活動が安定して出来るようになったのも活動開始より二年弱、ここ半年前後の話らしい。
「たまたまドロップしたランダムスキルペーパーで『
「十番台階層で四人五人のパーティ組んでちゃ、一日二万も稼げねぇもんな」
「実力を身に付けるための下積み期間ってやつよ。装備が最初から整ってた分、これでも普通より早い方なんだけど」
溜息と共に、リゼがジト目で俺を睨め付ける。
「百五十時間で二十階層フロアボスとか。殆どギャグでしょ」
「前も言ったが、大抵の連中と俺とじゃフィジカルも運動神経も違い過ぎる。平均値を基準に考えれば、そりゃな」
暗に「俺、天才だし」と冗談半分で告げてみたところ、ムカついたらしく脛を蹴ってきたため、ひらりと躱す。
「避けんな」
返す刀、更なる追撃。
ほう、やる気か。良かろう。
来いよリゼ。鎌なんか捨ててかかって来い。
「お前さん等、何やってんだ?」
荒ぶる鷹の構えを取るリゼ、天地上下の構えで対する俺。
そんな緊迫した状況に割り込む、見知らぬオッサン。
「何って、そりゃ……何やってんだ俺達」
「無駄に疲れるだけだし、やめましょ……」
死ぬほどアホらしくなり、互いに構えを解く。
不毛な争いに終止符を打ってくれた救世主たるオッサンに礼を述べると、ひどく曖昧な表情を返された。
救世主のオッサンは、オッサン達だった。
「深層のドロップ品は大体時価だからな。変動に合わせて狩り場を移せば、上手くやりゃ一度のアタックで一人頭ウン千万稼げる。経費を差っ引いても、当分は悠々と過ごせるのさ」
成程。金のためダンジョンに潜るのはつまらんが、入り用になる時は必ず来るからな。
覚えとこう。
オッサン達は良ければ一緒にフロアボス討伐をやるかと誘ってくれたが、謹んで断った。
深層を活動区域とする一線級の手腕に興味が無いと言えば嘘になるが、どうせ二十階層程度じゃ大したものは見れないだろうし。
それに。
「この下のフロアボスとは今回が初なんでね。腕試しも兼ねて自分の手で倒したい」
「お。そりゃ空気を読んでやらねえとな」
「兄ちゃん、今日が二十番台階層デビューか! となると、ガタイもいいし三年目くらいか?」
己の曾てを懐かしむような語調。
そこでリゼが、ぽつりと口を挟む。
「そいつ、
オッサン達の表情が、一斉に引き攣った。
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