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 頭クラクラする。鉄分不足だな。


「……トレーニングルーム調整? そんな予定、掲示板に出てたっけ?」

「さあな」


 ダンジョンゲートを擁する別館までの通路途中にあるトレーニングルームの扉に浮かぶ『調整中』の文字。

 たぶんに暫くかかるだろうから、明後日くらいまで使えないんじゃね。


「ま、別にいいけど。こんな汗臭い部屋入りたくないし。臭いとか移ったらサイテー」

「お前『消穢』あんだろ」


 臭いが移るどころか、泥を頭から被っても全く汚れないだろうに。


「気分の問題よ」


 そう言われてしまうと、返せる言葉もありゃしねぇ。






 ところで。


「リゼ。俺の新装備一式、どう思う?」


 樹海エリアに棲む蜘蛛型クリーチャーの糸で織ったインナーとジーンズ。

 大狼の鞣し革を使ったブーツと短ジャケ。

 後ろ腰に水銀刀を吊るす、スプレーパイソンの革で拵えさせた剣帯。


 武器購入に合わせ、やはり最低限の装いは揃えたいと考え、素材持ち込みで安く作って貰った品々。

 極め付けは、髑髏の顎を模ったハーフフェイスマスク。

 材料は内包するエネルギーを使い切ったクズ魔石。加工が容易で強度もそこそこあるため、装飾品製作に重宝するのだ。


 ちなみに耐久性は、予算の問題で講習受けた時に貰ったクソダサ防具とどっこいどっこい。

 要求したのは見た目だけだ。装備品とかデザイン性が第一に決まってんだろ、探索者シーカー舐めんな。


 さて、リゼの反応は。


「…………」


 おいスマホ仕舞え。

 無言で撮るな、肖像権の侵害。


「どうする気だ」

「SNSに拡散してあげようかと」

「やめろ、何考えてやがる」


 空恐ろしい真似しやがって。今の御時世で個人情報漏洩が孕む危険度を分かってんのか。

 いつの間にか一面識も無い奴の連帯保証人にでもされたらコトだぞ。


「あ、早速返信ついた。『今日は彼氏とダンジョンデートですか?』」

「投稿するな! 消せ!」

「『やーん、彼氏じゃないぴょん! お・と・も・だ・ち!』」


 SNS弁慶か、お前。

 しかも死ぬほど腹立つキャラ付けだなオイ。





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