32
頭抱えて悩んでも仕方ないので、実際に試し斬りをやってみることに。
見た感じ、大根一本まともに斬れそうもないが。
「重い」
二度三度、軽く振り回す。
サイズ的には片手剣だが、持ってみればバーベルシャフト並みの重量。
素の腕力じゃ、コイツを片手で扱うのは少しかったるいな。
「腰に吊るして持ち歩く分には問題無いか」
圧縮鞄からの出し入れは、どうしてもモタつく。
戦闘の都度、手探りで得物を探すなど間抜け極まる話。よってダンジョン内では携行が基本。
……ま、そこら辺は後で考えよう。
「さて。カタログで推しまくってた御自慢の耐久性は、と」
刀身を掴み、力んでみる。
曲がりそうで曲がらない、押し込めそうで押し込めない、形容し難い感触。
切っ先で床を叩くと、何やら奇怪な手応え。
表面が僅かに波打ち、握り締めた柄まで届く筈のエネルギーを散らしてる。
今度は少し強めに振り下ろす。
例えば鉄パイプで同じことをしたなら、掌が痺れるほどの勢い。
しかし、鈍く重い音色とは裏腹、微々たる反動。
たわんだ刀身が衝撃を呑み、呑んだ衝撃を元の形に戻ろうとする反作用に乗せ、跳ね返している。
打ち込んだ床面には、薄く亀裂が奔ってた。
「このサンドバッグか?」
一度全力を測っておくべく、最悪ブッ壊しても構わない頑丈な物はあるかと聞いてみたところ、先日素手で引き出せる『豪血』の限界攻撃力を確かめるために使った巨大サンドバッグを指された。
なんでも近々買い換えるらしい。
「マジでいいんだな? 後で文句言っても弁償しねーぞ」
「どうぞどうぞ。寧ろ壊して頂いた方が片付けに助かりますので」
慇懃かつ平坦に告げる職員の口舌には、末尾に「出来るもんなら」という声には出さない台詞が、あからさまに続いていた。
冗談でも自信過剰でもなんでもねぇんだが。
あと、アレだ。離れてた方がいい。
怪我しても知らんぞ。
「豪血――」
スキル発動。動脈をなぞる赤光。
からの。
「――『深度・弐』――」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます