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「また魔石だけかよ」


 いかにもロックマンが潜んでいそうな岩場を徘徊、発見次第交戦からの討伐。

 倒した数が片手の指を埋める頃にはコツも掴み、間を置かず仕留められるように。


 となると、途端に飽きるのが俺だ。

 昔から何でもやればすぐ出来る方だったため、同じことの繰り返しが苦痛でしょうがない。


「いい加減、落とせや宝石」


 拾った魔石をリュックに詰め、次を探す。

 早く終わらせて帰りたい。






 此度、俺が装備購入用の資金稼ぎに山岳エリアを選んだのは、十七階層に現れる岩のクリーチャー、つまりロックマンがドロップ品として宝石を落とすと聞いたからだ。

 アクセサリーに人気だとか、加工すると特殊な金属の溶剤になるだとかで、結構な値が付くらしい。


 何せ百万だ。甲府迷宮の十番台階層じゃ何日かかるか分からん。

 よってロックマンの落とす宝石を集め、早急に金を得ようという計画だったワケだが。


「全然落ちねぇ」


 途中で数えるのをやめたが、リュックの重さから察するに、そろそろ五十近いロックマンを葬った。

 端末曰く、直近の討伐数とリポップまでの期間を照らし合わせたところ、今現在十七階層全域に於けるコイツ等の総数は百から百五十前後。

 下手すりゃ半分倒した計算。しかし目当ての宝石は影も形も見えない。


 ……そりゃそうだ。簡単に手に入るようなら今頃ここは探索者シーカーで溢れてるし、第一そんなものに高値など付かん。

 我ながら見通しが甘かったか。アタックを始める前は謎の自信に満ち溢れてたんだが。


「このままだと、良くて七、八万行くかどうかくらいか」


 現実は厳しい。五歳の時のパッチテストでスロット無しの判定を食らった時、思い知ってたろうに。

 喉元過ぎれば熱さを忘れる。晴れて探索者シーカーとなったことで少し浮かれてたか。


「帰り道を考えたら限界まで『双血』使うワケにも行かねーし、ロックマン自体も見かけなくなって来たし……シャオッ!」


 突如、上から襲って来た四枚翼の鷹型クリーチャーに、ムーンサルトキックをカウンターで食らわせて蹴り殺す。

 なんだコイツ。


「教えて端末先生っと……『ハネ四枚の鳥さん』? 誰だよ名前付けた奴」


 クリーチャーもスキルと同じで、最初の発見者が名付けを行う。

 故に時折、こんなふざけた名を与えられた哀れ者が居るのだ。


「なんか気ぃ削がれたな……もういいや。どうせ今日一日しか滞在予定申告してねぇし、帰るか……」


 消え行くハネ四枚の鳥さん。

 精々千円程度だろうサイズの魔石を拾おうと手を伸ばし――はたと、動きを止める。


「あァ?」


 無心で殺めたため、物欲センサーが働かなかったのか。

 実はリゼの取り分にあった物以外では、未だ目にかかる機会が無かったドロップ品。


 しかもギフトボックスと同様、あらゆるクリーチャーが落とす可能性こそあるものの、確率自体は通常ドロップより遥かに低いレア物。


 封蝋を捺されたスクロール――スキルペーパーが、砂利に埋もれて転がっていた。





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