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 甲府迷宮の一階層から五階層までは、他の大半のダンジョンと同じ迷宮エリア。薄暗く見通しが悪い。

 六階層からは見通しに加え、足場も悪くなる樹海エリア。

 十一階層からは視界こそ開けるものの、隠れる場所が無くなる平原エリア。


 そして。この三回目のダンジョンアタックで初めて訪れた十六階層から二十階層は、山岳エリア。

 足に負担を強いる岩肌剥き出しな地面と急勾配。そんな地味に体力を削ってくる地形が特徴だ。





 自分で倒し、既に攻略法を見付けたクリーチャーの情報くらいは、端末で確認することに決めた。

 ゴブリンみたく有名な奴なら兎も角、マイナーなクリーチャーに遭遇すると呼び方で困るし。


「コイツは、と……」


 端末を開き、画像検索にかけるべくカメラを向ける。

 四肢を砕かれて倒れ伏し、死を待つばかりとなった有様の、岩の身体を持つ大柄な人型クリーチャー。

 重く頑丈、加えて獲物が近付くまで丸くなって周囲の景色に溶け込む擬態能力も中々だったが、動きは鈍いし力も見かけほど強くなかった。

 故に『鉄血』で硬化した拳を関節部に何度か叩き込めば簡単に仕留められた。


「あー、出た出た……やっぱりコイツが『岩男ロックマン』か。名前、安直過ぎだろ」


 どうでもいいが、ダンジョン黎明期は必須とまで言われた鑑定系スキル。

 しかし、このように世界各地のダンジョンの地形や出現するクリーチャー、ドロップ品の効能などの情報が充実するに連れ、価値を失って行った。

 ダンジョン由来の生物及び物品にしか使えないという特性も合わさり、嘗て血を見る争いすら呼んだ『鑑定』や『解析』のスキルペーパーは、今や捨て値で買える凋落振り。

 盛者必衰、諸行無常。三歩進んで二歩下がる……は、違うか。


「ん」


 やがてロックマンは魔石のみを残し、風が乾いた砂を飛ばすように跡形無く消え去る。

 何度見ても不思議な光景だ。解体作業や死体撤去をする手間が省けて助かるけども。





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