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対クリーチャー用の兵装を求めるにあたり、まず俺がすべきことは理想と懐具合とを交えた上での己との相談。
手始めに支援協会発行のカタログをダウンロードし、大学の食堂で実態調査中。
「ひえー。
「使う素材の時点でダンジョン産のドロップ品に限られるからな。調達だの加工だの色々かかんだよ」
レポート地獄から解放され、暇を持て余してた吉田が空間投影ディスプレイを投げ出す。
それハイエンドモデルの一覧だぞ。八桁未満の商品はひとつも載ってなくて真っ先に諦めた。
尤もグレードを落とそうと、やはり根本的な価格帯そのものが高い。
エントリーモデルなら五桁で買えるのもあるにはあるが、この辺のビギナー向けラインナップは殆どが一桁台階層での運用を想定したもの。耐久性に大きく不安が出る。
取り分け俺の場合『豪血』の埒外な筋力に耐えられることが前提ゆえ、下手な安物は一瞬でオシャカだ。
「お! 月ちゃんコレとかどーよ! 『ドラゴンころせるかも』!」
それは剣というには、あまりにも大き過ぎた。
大きく、分厚く、重く、そして大雑把過ぎた。
それは、まさに鉄塊だった。
大昔の漫画で見覚えのあるフォルムを持つ、だいぶギリギリな名前の、特売欄の隅に記載された巨剣。
各方面に怒られるわ。確か著作権まだ切れてねーぞ。
「横綱が乗って四股踏んでもダイジョビだってよ! 無敵じゃね!?」
「乗っても大丈夫って、普通は象とかだろ」
「えー、でも横綱だぜ? 象より横綱の方がスゲくね? 張り手一発でナウマン象もKOよ!」
何故ナウマン象。絶滅種を引き合いに出すなよ分かり辛い。
つか出来てたまるか。お前の横綱に対する信奉なんだ。
……とは言え、名前に目を瞑れば案外と悪くない選択肢かもな。
頑丈さは折り紙付きだろうし、このリーチと重量に俺の膂力が合わされば大幅な攻撃力増強が望める。
いやいや待て待て、よく考えろ『ドラゴンころせるかも』だぞ。
こんなパチモン臭が漂うもん抱えて歩いてたら、物笑いの種だわ。
「ちなみに値段は」
「ディスカウントで九万九千八百円! スペース取って邪魔だから誰か早く買って下さいだって!」
よし買った。
名前は自分で勝手に変えよう。竜殺剣とか。
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