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全国津々浦々へと根を張る探索者支援協会には、
要は一種のトレーニングルーム。十トンのバーベルとか時速三百キロまで加速できるランニングマシンとか、笑えるものが色々置いてあるのだ。
「豪血」
全身の動脈に赤い光が灯り、本来の限界を突き抜けて漲る膂力。
厳ついグローブを嵌めた拳を引き絞り、ボクシングジムに置いてあるようなそれの十倍はデカいサンドバッグを打つ。
太い鎖で吊り下がる中型トラック程度の重量が詰まった円柱は、くの字に曲がりつつ九十度近く浮いた。
そして浮いたものは当然、元の位置に戻ろうと作用する。
振り子の要領で勢い付いて迫り来る、ウエイト差およそ数十倍の質量。
無防備に受ければ、当たりどころが良くても暫くは入院生活だろう。
「からの」
青い光を帯びる静脈。この全身に光の線が浮かぶエフェクト、何気に好きなんだよな。
尤もコイツこそ『双血』の欠点その二。身体強化と肉体硬化、どっちを使ってるかバレバレになる原因だけど。
クリーチャーの中でも頭の良い奴等は、こういうの対応してくるらしい。
「鉄血」
十階層のフロアボス、あの牛サイを思わせる衝撃を棒立ちで受ける。
踏ん張りが利かず数メートル後退させられるも、結果は無傷。
普通なら鍛えようが無い体内に至るまで硬化するスキルは極めて珍しい。こいつは相当な強みだ。
「やっぱ片方ずつ、てのがネックだな」
飲むヨーグルト片手、己のスキルを考察する。
フィジカル偏重の『豪血』は扱いを誤れば過ぎた力の反動で俺自身が傷付いてしまう。
例えばさっき、戻って来るサンドバッグを更に『豪血』状態で殴ってたら、拳はタダじゃ済まなかった。
そしてタフネス偏重の『鉄血』は、筋力や反応速度が通常時と変わらない。
いくら俺の元々の身体能力が高かろうと、大型クリーチャーとの力比べで勝てる道理も無し。
硬いだけでは恐らく二十階層以降のクリーチャー相手には厳しい。
かと言って強化した拳打蹴撃は力が強過ぎて俺自身への跳ね返りが懸念される。
つまり――そもそも素手ってのが無茶。
「防御面に問題は無い。差し当たり必要なのは武器か」
この膂力を活かせる得物。
最低でもそいつを手に入れないことには、二十番台階層への進出は難しい。
とどのつまり、連鎖的に別の問題も浮上するワケだ。
「……幾らあれば足りるんだ」
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