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 掌サイズの完全な正六面体。

 探索者シーカーの間でギフトボックスと呼ばれる、びっくり箱のような宝箱。


「こんな浅い階層で見付かるなんて珍しいわね。二十番台からよ、普通」

「ほーん。どうする、今ここで開けちまうか?」


 ギフトボックスの中身は開けるまで不明。

 より正しくは、開けた瞬間に中身が決まるとか。


 一例を挙げれば、難度十に指定されたダンジョンの深層に棲まうクリーチャーだけが落とす激レアドロップ品が出て来た、なんて話もある。

 要は景品のラインナップが凄まじく幅広いガチャ。


「……いざ開封からの小石でした、とかだと一気にガラクタになるのよね」

「未開封なら最低でも五十万だっけか? つくづく人類って生き物はガチャが好きだな、あー度し難い」

「そう言うアンタも好きでしょ、ガチャ」


 オイオイオイオイ、何を仰るウサギさん。


「たりめーだろ、俺をなんだと思ってんだ。地球生まれヤーパン育ち、悪そうな奴は大体蹴散らしてきた健康優良な純人類だぞ。お前の仕留めたクリーチャーが落とした代物じゃなきゃ拾った瞬間にオープンザボックスかましとるわ」

「呆れるくらいの刹那主義ね。個人的には嫌いじゃないけど御両親の苦労が偲ばれるわ」


 勘当食らったよ。全く、一億ぽっちの金でギャーギャーと。

 ……まあ宝くじでも当たらなきゃ、二十歳そこそこの若造に真っ当な手段で到底用立てられる額じゃなかったのは確かだが。






 持ってると欲望に負けて開けかねないので、このギフトボックスの正当な持ち主であるところのリゼに渡す。


 暫し掌上で転がされる、奇妙な質感の小箱。

 やがて腹は決まったとばかり、薄っすら浮かぶ継ぎ目に爪が立てられた。


「ん。これ売ってまで欲しい物とか今は特に無いし、売る気も無いのに勿体ぶってもね。いいわ、開けましょ」

「グッド! やっぱテーブルに並んだ料理は一番好きなものから食うべきだよな!」

「なに? アンタ、ショートケーキのイチゴを最初に平らげるタイプなワケ?」


 無いわー、とガムを膨らませながら首を振られる。

 ざけんなや。イチゴは最後に食うっての。


 そんな云々はさて置き、リゼが指先へと力を篭めるに連れ鳴り渡る、卵の殻が割れるような音。


 ギフトボックス表面を奔る亀裂、漏れ出る燐光。

 生命の誕生を思わせる、静謐とした厳かな空気。


 そして。


「は?」

「あァ?」


 盛大に爆発した。





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